【F1】フォースインディアの「企業秘密」を担う男・松崎淳 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「これまでに何度も表彰台を目前で逃してきました。結果には出ていなかったけど、惜しいレースは何度もあったんです。去年のバーレーンは表彰台を意識しすぎてコンサバティブな戦略を採ったのが裏目に出ましたし、マレーシアだってホイールナットにトラブルが出なければ表彰台がとれていたレースでした」

 表彰台を獲る力があったとしても、わずかなミスですべてを失いかねないのが今のF1だと松崎は言う。

「今は本当にチーム間の差が小さいですから、今年のバーレーンGPだって5番手以下になっていたかもしれませんし、1ミスでトップ10外まで落ちた可能性だってあるくらいです」

 そして、今回のカナダGPでは、レース終盤まで首位ロズベルグのテールに食らいつき、優勝さえ見えていたが、最後の最後にペレスのマシンにはブレーキトラブルが発生。ペースを落とさざるを得なかった。後方から迫るレッドブル勢の猛攻をなんとか抑え込もうとしてはいたが、「ブレーキがないのに、どうしろって言うんだ!?」とペレスの悲痛な叫びが無線に乗って響いた。

「最後の数周はトラブルが出て抜かれてしまいましたが、タイヤはまだ大丈夫だったので、何もなければあのままレッドブル勢を抑えられたと思います」

 ブレーキの効きが甘くなったペレスは、最後はフェリペ・マッサと接触して後退し、ポイント圏外でレースを終えた。戦略面では松崎の功績もあって優勝寸前まで行ったレースだったが、わずかな綻(ほころ)びからすべてを失ってしまった。

 今シーズンは「昨年よりもひとつ上のコンストラクターズランキング5位を狙っている」と松崎は語る。そのためには、まだまだマシンの強化が必要だ。「ドライバーが良いだけに、結果が出なければそれは単純にクルマが遅いせいだということになる」と松崎は気を引き締める。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る