【F1】あきらめない男・可夢偉が心待ちにする「最後のパーツ」 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ビアンキは、自分のタイヤを可夢偉のタイヤにぶつけながら向きを変え、それでも曲がりきれずにさらに二度、可夢偉のマシンに体当たりをしながらコーナーを立ち上がって行った。その後、可夢偉のペースが大きく落ちたのは、順位を下げて気落ちしたからではなかった。

「あのまま僕が逃げなければ(絡み合って)スピンするから、避けるしかなかった。でも、横のフロアがガッツリ壊されて、相当ダウンフォースがなくなりました。ブレーキングしても真っ直ぐ止まらへんし。ずっとこんなんですよ!」

 そう言って可夢偉はステアリングを大きく切る動作をする。

 大きくペースを落としながらも、なんとか13位でチェッカーを受けた可夢偉のマシンは、リアタイヤ前方のボディワークが大きくえぐれていた。そのせいで車体右側だけリアエンドに気流が行かず、マシンが不安定になっていたのだ。

 ケータハムにとってショックだったのは、マルシアのビアンキが、チーム創設以来初となる入賞(9位)を果たしたことだった。それは、まさに可夢偉がモナコで狙っていたことであり、この2ポイントは、ケータハムのマルシア追撃が難しくなったことを意味していた。

 レースが終わり、ケータハムの隣のマルシアのガレージでは、祝いのシャンパンが何本も開けられ、祝勝会のような記念集合撮影まで行なわれていた。それとは対照的に、2台ともに入賞圏外の11位と13位に終わったケータハムは、チーム全体が大きく沈んでいるように見えた。

 それでも可夢偉の顔は上を向いていた。今が我慢のしどころであることを分かっているからだ。事実、ケータハムはスペインGP後のテストで、状況改善の糸口をつかんでいた。テストではスペインGPの予選よりも速いタイムを刻んでいたのだ。

「新しいパーツも入ってないし、ミディアムタイヤなんですけど、(ソフトタイヤで走った)予選よりもタイムが速かったんです。ガソリンも積んでいたし、エンジンも予選モードの設定ではないから遅いはずやのに。あの状態で走ったら予選は1秒くらい上がったはず。ここをこうすればいい、というのは分かりました。その対策パーツが入れば、かなりポテンシャル向上につながると思います。問題は、それがいつになるかですけどね」

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