2014.06.04

【F1】あきらめない男・可夢偉が心待ちにする「最後のパーツ」

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「一番大事なのは安定して走ることで、あとは戦略がハマるかどうかですけど、そこは運次第の部分もあります。でも、去年(のモナコ)はクラッシュしているクルマも多かったんで、しっかり走れば(入賞の)チャンスはあるかなと思っています。タイヤが保てば、何かあった時の対応力は上がると思うし」

 たとえ棚ぼたでも、ポイントを獲得したい――。それはシーズン当初の可夢偉の考えとは真逆だ。運ではなく、実力で一歩ずつステップを踏んでポイントが獲れるところまで行く。それが可夢偉の思い描いていたビジョンだった。

 しかし、開幕から6レースを終えた今、ケータハムが実力でマルシアやザウバーを上回り、ポイントを獲得することは限りなく不可能に近い。それが分かったからこそ、可夢偉は荒れたレースが予想されるモナコで、どんな形でもいいから好結果を手に入れたいと思った。

ファンからのサインのリクエストに応じる小林可夢偉「チームとして今までで一番ツラい状況であるのは間違いないです。でもやるしかない。どうやってチームのモチベーションを上げていくかを考えないと」

 序盤戦の結果に落胆し、チーム売却まで囁かれるようになり、チームの士気は下がっている。共同チームオーナーのトニー・フェルナンデスが条件の良い売却相手を探していることは、以前から明らかだったとはいえ、ネガティブな報道が良い雰囲気をもたらすはずもない。

 好結果を残してチームを鼓舞したい。そして、モナコならそれができる可能性がある。迎えた決勝で可夢偉は好スタートを決めると、ペナルティで後退したマルシア勢を抑え込み、上位勢の脱落によって少しずつ順位を上げていった。レース中盤を過ぎて、12位を走る可夢偉に、入賞の可能性も見えてきた。

 そんな矢先、フェラーリのキミ・ライコネンに道を譲った後に残されていたわずかな空間に、後ろに抑え込んでいたマルシアのジュール・ビアンキがノーズを突っ込んできた。通常ならば追い抜きなどできない狭い低速コーナーの「ラスカス」だ。