2014.05.30

F1の心臓部を扱う白幡勝広「たたき上げメカニック人生」

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 だが、白幡はそんな声を一蹴する。

「『F1のメカニックはどうせ分業だから』なんて言う人がいますけど、それは世間で言われていることであって、じゃあ、そう言っている人たちはF1マシンを触ったことがあるのかというと、そんな人はいないわけです。実際にF1の世界に入ってみてどうなのか、自分でやってから言ってくれって話です」

 自分の手で世界を広げ、自分の足で這い上がってきた白幡だからこそ、その言葉には重みがある。それは、実際にF1の世界で働いている者だけが語ることのできる言葉であり、そこには、F1の世界で生きている者だけが持つプライドが感じられる。

「F1の世界で働いている人は、みんな同じだと思います。メカニックでもエンジニアでもジャーナリストでも、特定の職業の人だけがすごいとか、苦労しているということではなく、それぞれが自分の得意分野で仕事をしているだけで、そのベースにある苦労とか喜びは同じだと思います」

 日本から飛び出し、世界で活躍する夢の仕事――。白幡は「今の若者も、もっと世界へと活躍の場を広げていってほしい」と語る。実際、彼はエンジニアやメカニック志望の若者たちをヨーロッパに点在するレーシングチームに紹介するといった支援を続けている。

「やっぱり、F1で働くことは面白いですよ。日本の若い子たちにどんどん世界に出ていってほしいし、F1に限らずどこの国のレースに行っても日本人が何人も働いているというふうになればと思いますね」

 そんな話をしていると、レースを終えたマシンの車検が終わり、白幡は「じゃあ!」と言って仲間のメカニックたちとともにマシンを押してピットガレージへと戻っていった。その背中には、世界最高の舞台で世界最速のマシンを扱っているのだという誇りが溢れていた。

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