【F1】今季未勝利。苦悩する王者・ベッテルは浮上できるか

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 予選でトラブルに見舞われてギアボックスを交換し、そのペナルティを受けて15番グリッドから臨まなければならなかったスペインGPで、ベッテルは4位まで挽回する好走を見せていた。

「バルセロナのレースはすごく良かった。速さの面でもタイヤの使い方の面でもね。その理由も分かっているし、それを異なる特性のモナコと次のカナダで確認したいね。バルセロナでは低速コーナーでの挙動も向上していたから、それがどう出るかだね」

 超低速サーキットのモナコGPでは、今季全勝のメルセデスAMGのパワーユニットが持つアドバンテージがなくなり、彼らの連勝が止まるのでは、と言われていた。そして、メルセデスAMGを上回る最右翼はレッドブルだと目されていた。

「メルセデスAMGはとても強力なパッケージを持っているから、モナコでも速いと思う。でも、僕らがそのギャップを縮められることは間違いない。バルセロナ(スペインGP)ではレースペースの面でギャップを縮めることができていたしね」

 ベッテルはモナコGPの週末を迎えるにあたって、やや控え目にそう語っていた。

 ベッテルは、誰よりも繊細にタイヤのグリップ限界を感じ取る能力を持ち、タイヤが滑り出すかどうかの間際でマシンをコントロールできるドライバーだ。そして、その能力を最大限に生かしながら、毎年少しずつ変わりゆくマシン特性に合わせてドライビングスタイルを微調整していく。

「誰だって新しいクルマを運転する時には、ドライビングスタイルを合わせ込まなければならないものだ。それは、どのクルマ、どのドライバーにもあてはまる。レギュレーションはみんな同じだから、それに合わせるしかない。僕らは速く走りたいんだから、どうすべきかは明白だよ」

 4年連続でチャンピンの座にある彼は、グランプリ前の木曜日に必ずエンジニアたちとコースを歩き、とりわけデータ分析を専門とするパフォーマンスエンジニアと各コーナーのドライビングについてコース上で話し合う。それが彼の速さの理由のひとつだった。

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