セナ没後20年。新たな「モナコマイスター」は誕生するのか?

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

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5月特集 F1 セナから20年後の世界 F1のレースのなかでも、伝統のある特別なグランプリ、それがモナコGPである。

 そのモナコGPを6度も制し、「稀代のモナコマイスター」と称されたアイルトン・セナ。彼が1994年のサンマリノGPの事故でこの世を去ってから20年。その間、 "セナのいないモナコ"はどのような歴史を刻んできたのだろうか。

 モンテカルロの街並みがどれだけ華やかであろうとも、無骨なガードレールが時に牙を剥く。そんなモナコGPで神がかり的な速さを見せ劇的な勝利を手繰り寄せる者が、F1の歴史上には幾度となく現れてきた。そして、そんなドライバーにだけ与えられてきたのが"モナコマイスター"という称号だ。その言葉にはどこか、モナコの女神に愛された者という響きが含まれているように感じる。

セナは、マクラーレン・ホンダ時代などにモナコで通算6度の優勝セナは、マクラーレン・ホンダ時代などにモナコで通算6度の優勝 アイルトン・セナがいなくなってからの20年間で、モナコマイスターという称号がふさわしいのは、きっと、モナコで5回優勝を果たしたミハエル・シューマッハをおいて他にはいないだろう。

 フェラーリ黄金期の2000年代にブリヂストンが特殊な「モナコ用タイヤ」を開発せず、ライバルであるフランスのタイヤメーカーのミシュランが、準・地元グランプリで労せずして勝利をかっさらい続けていた。もしブリヂストンがモナコ用のタイヤを開発していたら、シューマッハの勝利数はもっと伸びていてもおかしくなかった。

 そして、予選中にコース上にマシンを停めたことが妨害行為と裁定され、決勝で最後尾スタートを余儀なくされた2006年も、おそらく普通に戦えばシューマッハが勝利を収めていたことだろう。

 現役ドライバーでモナコを2回以上制したことがあるのはフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)ただひとり。王座経験者のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)、ジェンソン・バトン(マクラーレン)、キミ・ライコネン(フェラーリ)、そして父がF1王者のケケ・ロズベルグであるサラブレッドのニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)も、それぞれたった1度しか勝利を挙げることができていない。

 シューマッハ以降、F1界にはモナコマイスター不在の時代が続いているのだ。それは、モナコGPがF1の中で極めて特殊なグランプリであることの証でもある。

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