2014.05.21

新時代のF1で勝つために、ホンダが今考えていること

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 そんな“ホンダ不調説”の一因となったのが、日本のスーパーGTとスーパー・フォーミュラに導入されたホンダの新型エンジンが不振であること。どちらのカテゴリーでもライバルメーカーに差をつけられている。そんな状態でF1に臨んで果たして戦えるのか?とファンが懸念するのは、ある意味当然のことだろう。

 そのことは新井氏も十分に理解している。

「国内用のエンジンがなぜダメなのか原因は把握していますし、そこは真摯に反省して、なんとかしようと努力しています。2015年のF1用パワーユニットはそれに似たコンセプトの部分もありますが、実際にはかなり違いますから、同じようなことにはなりません」

 今シーズンの国内レースで苦戦を強いられているのは、すでに述べたような妥協点の見出しを誤ったことに原因があったようだ。実際、1年前にF1復帰を決めた時、エンジニアたちの間では2016年からの復帰が最適なのではないかという意見が大半だったという。明言こそしないが、新井氏は現在のF1プロジェクトにも通ずる苦悩を明かしてくれた。

「時間がなくなってくると、人は妥協してしまうわけです。『まぁこれで良いだろう』と。しかしそこで立ち止まれば、最後まで進歩し続けた相手に負けてしまう。『本当にこれで良いのか?』という自問自答を繰り返さなければならない。最後は、時間との戦いですね」

 新時代のF1用パワーユニットは、内燃機関エンジンにターボチャージャー、そしてふたつのエネルギー回生システムとバッテリーを組み合わせた、極めて複雑なシステムになっている。今年のマシンのカウル内をのぞき見ると、そこには発電所か工場プラントのような複雑な機械類や配管が入り組み、とても従来のクルマのような構造ではないことが分かる。

「これだけ複雑なシステムになると、全体を考え抜いてから作らなければダメなんです。AとBとCを作って、BとCのどちらかが良さそうだから、もう1個ずつ作って試そう、というようなことでまとまるものではない。モノを作ると目の前のそれを直そうとしてしまうけど、正解はそこではないかもしれないんです」