川井一仁が語る「アイルトン・セナ、20年前のあの日......」 (2ページ目)

  • 川喜田研●インタビュー・構成 interview by Kawakita Ken

無料会員限定記事

 それで、やはり動揺したんだろう。いつもは金曜日と土曜日にやるセナのインタビューがすべてキャンセルになった......。だから、あの週末は、決勝まで一度も彼とゆっくり話ができなかったんだ。唯一、日曜日のレース前に、イモラの狭いパドックですれ違った時、「大丈夫?」って声をかけたら、セナが「ああ......」と、"心ここに在らず"という感じの、浮かない声で返事してくれてね......。それがおそらく、セナと交わした最後の言葉だったと思う。

 その後、いつものようにスターティンググリッドに行って、決勝レースが始まるんだけど、そこからの記憶は曖昧だ。スタート直後にペドロ・ラミーとJJレートの衝突事故が起きたせいでコースにセイフティカーが入って、4周目にレース再開......。で、セナの事故はその直後に起きたわけだけど、僕はちょうどその時、ウイリアムズのガレージにいた。セナの弟のレオナルドの横で、モニター画面を見ていたんだ。事故の瞬間、レオナルドが両手で口を覆いながら、凍りついた表情でモニターを見つめていたのを、今でもハッキリと憶えている。その後、彼が慌ててガレージを飛び出して行く姿も......。

 ところが、その後のレース展開は何も憶えていないんだ。思い出すのは、レースが終わって、セナのことを伝えないまま、5位入賞した右京(片山右京)にガレージ裏でインタビューしたことぐらい......。事故の後、フジテレビのレース中継は事故現場からのレポートに切り替わったし、自分はきっと最終コーナー側にあるメディカルセンターで、セナの容体を取材していたんだと思うけど、ともかく、そのあたりの記憶が完全に抜け落ちている......。

 憶えているのは、セナの映画(『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』)にも出てきたあのシーン、フジテレビの中継で三宅正治アナウンサーに僕がセナの死亡を伝えるメモを渡して、そうしたら、三宅さんが僕をカメラの前に無理やり引っ張りこんで......。

 ちなみに、後になってその時の映像を見て驚いたんだ。自分があんなに「シオシオ」な表情になっているとは思ってもいなかったから......。

全文記事を読むには

こちらの記事は、無料会員限定記事です。記事全文を読むには、無料会員登録よりメンズマガジン会員にご登録ください。登録は無料です。

無料会員についての詳細はこちら

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る