【F1】中国GP最終ラップで可夢偉が使った「トリック」とは? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 中国GPの週末、可夢偉とケータハムは最初の目標としていた「トラブルのないスムーズな週末」を今シーズン初めて過ごすことができた。フリー走行では金曜日に16周と32周、土曜日には12周を走り、マシンのセットアップも進めた。

次戦スペインGPへ向けて、マシン開発を進める小林可夢偉とケータハム次戦スペインGPへ向けて、マシン開発を進める小林可夢偉とケータハム しかし、それとは対照的に、マレーシアGPとバーレーンGPで尻尾をつかみかけたかに思われたザウバーの背中は遠のき、マルシアに追い立てられている。現時点でのこのクルマの限界にぶち当たってしまったのだ。

「話し合いだけやったらスムーズに行くんです。でも実際に走ってみると、そのパフォーマンスはスムーズじゃない。F1ってね、走らなかったら何でもスムーズに行くんですよ、頭の中だけならね」

 データ分析とシミュレーションに基づいた話し合いはスムーズ。しかし、それが正しく結果に反映されない。

 では何が間違っていて、何がシミュレーションと違っているのか。それをコース上で感じ取って指摘するのが、ドライバーの仕事だ。

 ケータハムが昨年、若手ドライバー2人を起用して苦労したのがその部分であり、F1参戦から4年が過ぎてもいまだ下位に低迷している理由もそこにある。

「このチームが速くない理由は空力にあるんです。元々の特性として、ダウンフォースがない。そこをどう変えていくかです」

 上位チームもこぞって使うTMG(トヨタの元F1活動拠点)の風洞で開発を進めてきたパーツは、この中国GPにも間に合うことはなかった。しかしヨーロッパラウンドの開幕となる次のスペインGP(5月11日決勝)には間違いなく投入されることになる。60%スケールという縮尺の模型での実験が可能なTMGの風洞ならば、従来の50%スケール風洞に比べて格段に正確な結果が期待できる。

 そして、このスペインGPに投入されるアップグレードこそ、可夢偉が1月末にこのチームへ来て以来、開幕前のテストを通してチームとともに方向性を議論しながら進めてきた開発の第1弾にあたる。このクルマとチームに何が欠けているのか、何をどう補強すればどれだけ強くなれるのか。可夢偉がそれを指摘し、チームを引っ張ってきた。その成果が初めて表れることになるのだ。

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