【F1】小林可夢偉に小さな手応え。「やっとマトモに走り出した」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ケータハムはタイヤの性能低下が小さく、ライバルたちが3回のタイヤ交換を必要とするところを2回のピットストップで走り切る作戦。可夢偉はそこに勝機を見出そうとしていた。巡航ペースが多少遅くとも、ピットストップ1回分の差をつけられなければ、最終的に自分たちが前に出ることができる。ポイント争いではないかもしれないが、下位集団でひとつでもポジションを上げてフィニッシュすることが、今の可夢偉とケータハムにとっての戦いなのだ。

「序盤のペースは悪くなかったんですよ。全然問題なくて、狙いどおりザウバーと戦えていた。ロータスはちょっと速かったけど、マルシアは眼中になかった。そういう意味では、作戦どおり戦えていたんです」

 しかし41周目、その作戦に狂いが生じた。ザウバーのエステバン・グティエレスが他車に追突された弾みで宙を舞って横転。コース上に破片をまき散らし、その事故処理のために導入されたセーフティカーは、可夢偉にとってまさに招かれざる客だった。

 事故処理が終わり、残り11周でレースが再開されたが、その直後から可夢偉のマシンは目に見えてペースが落ちた。それまで圧倒していたマルシア勢と比べても1周で2秒から3秒は遅い。

 その原因はトラブルではなく、燃料にあった。

「燃料が1周分足りなかったんです。(トップ集団に抜かれて周回遅れになると予測して)1周遅れでフィニッシュする予定だったから、最初から56周分しか積んでなくて、セーフティカーが出(てラップダウンを挽回させられ)た瞬間に終わり、みたいな」

 セーフティカーが出動した場合、隊列を整理するために周回遅れは首位のマシンを抜いて隊列の最後尾に周ることになっている。つまり、ここでラップダウンを挽回したことで57周を走らなければならなくなったのだ。

 残り11周を走りきるため、燃料をセーブしながら走行しなければならなくなった可夢偉は、ペースダウンを余儀なくされたのだ。

「あれ(セーフティカー)がなければ、最後までザウバーと戦えていたと思うんやけど。完全に戦略ミスですね。まぁしょうがないし、運が悪いとしか言いようがないけどね。しかもマクラーレンが突然止まるし……」

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