【F1】小林可夢偉に小さな手応え。「やっとマトモに走り出した」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 そして、可夢偉の願いが通じたようにケータハムのマシンはトラブルなく走り続け、可夢偉はマルシア勢を上回る19位で予選を終えた。ザウバーやロータスから0.5秒以内のポジションは、決して悪くない。

「今のクルマの状態を考えれば、これが現実的な線でしょう」

 予選を終えて、可夢偉は素っ気なく答えた。

 実は、開幕戦から実戦投入した新型のフロントウイングはあと一つしか残されていない。スペアも含めて3つあったそのウイングは、開幕戦決勝の可夢偉のクラッシュと、マレーシアGP予選のマーカス・エリクソンのクラッシュで、残り一つになってしまっていたのだ。

 バーレーンGPではエースの可夢偉車には新型が装着され、エリクソン車とスペアのウイングは全て旧型。噂されていたTMG(元トヨタF1の活動拠点)の風洞で開発された新パーツは、この週末に間に合ってはいない。今のケータハムは、それほど綱渡りの状態なのだ。

「初めてグランプリ週末をスムーズにいけているんで、いらんこと考えずに自分たちのクルマのパフォーマンスを引き出すことだけを考えたいし、今日のところはそれがやれたんで良かったかなと思います」

 このとき可夢偉の胸中には、ひとつの期待があった。「自分たちがマルシアより速いのは明らか。決勝のペースでいえば、ザウバーやロータスと戦うことだってできるかもしれない」。

 今の自分たちのポテンシャルがどの辺りにあるのか。開幕戦では「周りと戦うことは考えずに」走らなければならなかった可夢偉とケータハムが、ここでようやくライバルと戦う段階までやってきたのだ。

 しかし決勝は、好スタートを切ったものの、目の前で混乱が起きた余波を受けてチームメイトとマルシアの1台に先行を許してしまった。

「スタートは普通にいったんですけど、ターン8で目の前でロータスとかトロロッソが暴れてくれて、ちょうどその後ろにおったからグジャグジャっとなって......」

 だが、マルシア勢より明らかに可夢偉のペースが上で、相手にする必要はなさそうだった。それよりも可夢偉が気にしていたのは、ザウバーとロータスだった。

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