【MotoGP】新旧天才ロッシとマルケスが開幕戦から熾烈なバトル

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 一方のロッシは、予選で10番手に沈んでしまい、ピットに戻ってくると、憂慮をたたえた深刻な表情でラップタイムの記されたモニターを見上げた。

「4列目10番手スタートは厳しいけれども、トップと0.5秒差だったのはポジティブな要素。レースは後半周回が勝負になるけれども、7~8周するとYZR-M1はタイヤが厳しくなる」

 予選後にはこのように不確定要素を挙げていたものの、日曜午後10時に始まった決勝レースできっちりと帳尻をあわせてきたのは、さすがというべきだろう。

 全22周で争われたレースは、中盤周回あたりからマルケスとロッシが後続を引き離して、一対一の戦いという様相を呈し始めた。前をゆくロッシの背後にマルケスがピタリと張り付き、マルケスが前に出るとロッシはその直後につくという周回が続いた。

「前方に出て、他よりもいいペースで走れていたので、マルクとバトルができると思った」(ロッシ)

「(序盤周回は)自信を持って走るのが難しかった。脚の状態のこともあったし、多くの選手があまりにあっさりフロントを切れこませて転倒していたので、少し不安にもなった」(マルケス)

 そして、21周目にレースが大きく動いた。コーナーごとに果敢に攻め、4回トップを入れ替えたふたりは、マルケス―ロッシの順で最終コーナーを立ち上がり、ファイナルラップへと向かった。

「21周目が鍵だった。勝つチャンスはあったと思うけど、マルクを前に出したときに、少しミスしてしまったようだ。マルクのほうが速く立ち上がるコーナーがいくつかあって、最終ラップで最後の勝負をしかけるくらいに張り付いていることができなかった。レース中盤まではミスしないように心がけたけれども、終盤には手持ちの札を全部出し切った。マルクとの戦いはいつだって愉しい。何回くらいトップが入れ替わったのかさだかではないけど、最後に彼が前に出たことだけはよく憶えてるよ(笑)」

 マルケスからわずか0.259秒差でチェッカーを受けたロッシは、最後の攻防をそんなふうに振り返った。僅差で抑えきった史上最年少王者も、最後のバトルには充ち足りた笑顔を見せた。

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