【F1】マシン開発は不調も、小林可夢偉が示したリーダーシップ (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 この時点で可夢偉はタイムシートの6番手。ところが、そこから9周したところでパワーユニットにさらに別のトラブルが発生し、それ以上の走行を断念しなければならなくなった。マシンから下りた可夢偉は、実は、最終日も朝から問題を抱えながらの走行だったことを明かした。

「パワーユニットのシステムがきちんと動いてくれないせいで、エネルギー回生も全然フルパワーじゃないし、エンジン単体で走っているようなものです。あと100馬力以上は出るだろうし、他チームのドライバーが言うようなトルクの太さとかを全然感じられていない状態。たぶん500馬力ぐらいしか出てないんじゃないかな......。メルセデスAMGに20、30キロ以上の差で追い抜かれましたからね。『俺らはなにをやってんねやろ!?』と思いながら走ってましたよ(苦笑)」

 可夢偉を追い抜いていったメルセデスユーザーの4チーム(メルセデスAMG、マクラーレン、ウイリアムズ、フォース・インディア)は、初日こそトラブル続きで時間を失ったものの、残る3日間で驚異的な信頼性を見せて周回を重ねていき、テストプログラムの進行が早かった。最終日のタイムシートの上位はメルセデス勢によって占められ、それに唯一対抗していたのが2番手タイムを記録したフェラーリだった。現時点でこの5チームが他を大きくリードしていると言える。

 ルノー勢で、最終日にひとり周回を重ねた可夢偉は、F1に戻って来られて嬉しいとか、久々のF1マシンのフィーリングがどうだという話は二の次と言わんばかりにこう語った。

「すごく厳しいですよ。パワーユニットさえちゃんとしてれば、普通にテストができるはずなんですけどね......。車体側はいつでも走れるんですけど、パワーユニット側がどうなるか分からへんから」

 そのため、パワーユニットの出力を抑え、電気系統などのシステムにかかる負荷を最小限にして騙(だま)し騙し走るしかなかったのだ。

「何が悪いのか、よく分からないんですよ。ここを直したと思ったら他が壊れて、次から次へとバンバン壊れていろんなところに問題が出て来るから」

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