【F1】異様な雰囲気の開幕前テスト。複雑化した新マシン開発の行方は? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 トロロッソのフランツ・トスト代表は「ヘレスにやってくるまでの数週間、チームスタッフは連日深夜2時、3時まで働き詰めだった」と証言する。それは他チームでも同じことで、なかには連日ほぼ徹夜で作業を続けてギリギリ間に合ったというチームもあった。

 たしかに、最初のテストでトラブルが頻発するだろうという予想はあった。しかし、まさかほとんどのチームがまともに走行することすらできないこの状況は予想外だった。それだけ2014年のF1は革新的で、これまでとはまったく異なる未知の世界へ突入しようとしているということだ。

 チャンピオンチームを率いるホーナーは言う。

「これまで以上にマシンは複雑化している。設計図の数は従来の4割増だ。それだけ多くのパーツを製造しなければならないということでもある。我々がクラッシュテストを通過したのは10日前だが、そのために何カ月も努力してこなければならなかった」

 王座奪還を目指すフェラーリのステファノ・ドメニカリ代表も「過去10年で最大の技術的チャレンジだ。我々の技術チームはこれに正しく対処しなければならない。パフォーマンスのレベルを向上させるためには、非常に慎重に深く探究しなければならない」と語る。

 現状は、どのチームも、実際にクルマを走らせて基本確認をするだけで精一杯という状態だ。

「ヘレスでの初回テストにマシンを完成させて持ち込んだそのこと自体が、すでに偉業と言えるよ」

 ホーナーが口にしたこの言葉と同じようなフレーズが、パドックのあちこちで聞かれた。

 今日もヘレスサーキットではターボエンジンの野太いサウンドが響き、その轟音とともにF1は新時代へと突入していく。まずは、この異様なテストが4日間でどのような結末を見せるのか、楽しみに待ちたい。

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