ついに小林可夢偉がF1復帰。シート獲得までの舞台裏 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 年末には幸運を祈るためにオーロラを見に行き、年が明けても「本当に今は願うしかない」というのが可夢偉の置かれた状況だった。『KAMUI SUPPORT』で得たファンからの支援とスポンサーからの資金を合わせた額が、チームを満足させるに足るのか。それは最後まで分からなかった。

 しかし1月20日にはすべての準備が整い、21日、ついにチーム体制が発表されるに至った。

 ケータハムは昨年度の選手権最下位のチームだ。しかし、技術力では同じ2010年新規参戦組のマルシアよりも上を行く。ルノーと提携関係を結び、2012年にはファクトリーを拡大して体制強化を進め、現在では350人ものスタッフを抱えている。

 2013年の彼らは、前年型マシンを改良しながら、だましだまし戦ってコストをセーブし、浮上のチャンスを秘めた大変革の2014年に資源を集中することを選んだ。昨年はランキング最下位争いを強いられるであろうことは、ある意味で想定の範囲内だったのだ。

 しかし、今年は違う。可夢偉も次のように語る。

「クリスマス前に初めてファクトリーを訪れた時、チーム全体にみなぎる向上心を肌で感じました。このチームにとっても2014年は、2012年にリーフィールド(イギリス)にファクトリーを引っ越ししてから培ってきた人材や施設の本当の力を初めて発揮できるシーズンになります」

 そのファクトリーで作られたニューマシンは、1月28日に始まるヘレス合同テストで走り始める。可夢偉も約14カ月ぶりとなる本格的なF1マシンドライブが楽しみで仕方がないようだ。

「とにかくすぐにでも走り始めたいです。これからテストが始まるまでは、できるだけ多くの時間をファクトリーで過ごす予定です。シミュレーターに乗るだけでなく、みんなとともに(1月28日からの)ヘレスと(2月の)バーレーンのテストに向けた準備をしたいと思います。とにかく心身共に準備万端なので、テストの開始が待ち遠しいです」

 これまでのレース人生の中で心身ともに最も追い込めているシーズンスタートだと可夢偉は言う。

 1年間F1から離れて過ごす中で味わった悔しさや後悔、そしてレースへの渇望、そうした思いが強かったからこそ、F1の世界に戻ってきた今、これまでよりもっと強いドライバーとしてF1で戦うことができる。可夢偉は今、心からそう感じているはずだ。

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