【MotoGP】マルケスとロッシ、
新旧天才の隣に「無二のパートナー」あり

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 最終戦バレンシアでマルケスが3位チェッカーフラッグを受けてチャンピオンが決定した瞬間、エルナンデスはピットレーンのサインボードエリアでモニター前のテーブルに突っ伏した。そして、しばらく顔を上げることができずにいた。

 選手とチーフメカニックの紐帯(ちゅうたい)は、予想外のアクシデントを経てチャンピオンを獲得したことにより、さらに強固なものになっただろう。

 ところで、この最終戦では、ロッシとバージェスが長年のコンビに終止符を打つこともレースウィークの大きな話題になっていた。

 34歳のロッシは、袂(たもと)を分かつに至った理由について「今のチームやジェレミーの仕事の進め方に対して、とくに何か問題や懸念、失望を感じていたわけではない。でも、自分の気持ちの奥にはこれまでと違う取り組み方をしたいという願望があり、今こそ、それをやるべきだと思った」と説明をした。

 一方、60歳のバージェスが語る話には、現在のロッシが抱える懊悩(おうのう)や迷いをすべて受けいれ、咀嚼(そしゃく)しているような印象もあった。

「多くの場合、トップクラスのスポーツマンは現役晩年にキャディやコーチを変えようとする。彼らはそうすることによって、問題を解決しようとするのだろう。今回のことも、バレンティーノがトップに戻って現役時代を延ばし、高い水準で戦える状態であろうとする行為の一環なのだと思う。

 残念ではあるが、何らかの変化が必要だった、ということだろう。今回のことで彼の裡(うち)なる闘志がふたたび燃え上がるのなら、これは正解だったということだ。

 バレンティーノとの14年間で、80勝を挙げることができた。平均で年間5勝以上だから、自分でもいい仕事ができたと思う。そのすべてが、いい思い出だ」

 マルケスとエルナンデスは、今年6勝を挙げた。ロッシとバージェスが達成した80勝という数字まで、彼らはあと何年かけて到達するのだろう。

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