【MotoGP】気迫のロレンソ、
マルケスの年間優勝に「待った」

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 チャンピオンシップポイントで18点の開きがある両者は、この日本GPでマルケスが優勝しロレンソが2位で終わった場合、23点の得点差になる。次のレース(最終戦バレンシアGP)でロレンソが優勝して25ポイントを獲得しても、マルケスが13位に入り、3ポイントを取れば、マルケスのチャンピオンが確定する。ここまでの16戦で、無得点に終わった2レースを除き14戦で表彰台に上がっている彼のパフォーマンスを見れば、この23点差は事実上のチャンピオン獲得といってもいいだろう。

 あるいは、マルケスが優勝してその背後のペドロサにもオーバーテイクされロレンソが3位で終わった場合、マルケスとロレンソの得点差は27点差になるため、このホンダのホームコースでチャンピオンが決定することになる。

 つまり、今のロレンソは、なにがなんでも絶対にマルケスの前でチェッカーを受けなければならない状態にある、というわけだ。

 リアタイヤに、初期性能に勝るソフト側コンパウンドを選択したのもそこに理由がある。

「レース序盤で一気に引き離してしまう戦略だった。最初に狙っていたような差を開けなかったけれども、周回を重ねてもリアタイヤは予想していたほど性能が落ちなかった。だから、最後まで攻め続けて最後にはアドバンテージを築くことができた」(ロレンソ)

 全周回の折り返し地点である12周目には、ロレンソと背後に肉迫するマルケスとの差はわずか0.181秒差だったが、15周目には0.315秒差、17周目には0.371秒差、そして18周目で一気に1.228秒の大差を築きあげた。なんとしてでもマルケスを突き放そうとする気魄(きはく)と胆力が、ぎりぎりまでマシンをバンクさせるロレンソの全身から漲(みなぎ)っていた。

 一方のマルケスは、この中盤周回でマシンの挙動を乱し危うく転倒しかけたために、それ以上の危険を冒さずに2位で20ポイントを確実に獲得する戦略に切り換えた、とレース後に話した。

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