【F1】名門フェラーリを支える日本人エンジニア、浜島裕英の存在感 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「もう1回ピットインが必要かとも思いましたが、ラップタイムが割と良かったので、そのまま最後まで行かせることにしました。フェルナンドも『最後の3周くらいはツラかった』と言っていましたが、後ろにいたマクラーレンやザウバーに助けられました。彼らのおかげでウェバーやメルセデスの追い上げが遅くなりましたから」(浜島)

 懸念していたミディアムタイヤの温まりも、大きな問題にはならなかった。フェラーリは、ブレーキの熱を使ってタイヤのウォームアップを改善するための新パーツを投入していたようだ。

「マシンが少しは改善しているってことじゃないでしょうか」

 浜島は真っ赤なシャツの襟元に汗を滲ませながら、笑顔で言った。だが、マシンにまだ十分な速さがないことも分かっている。

「今日は実力から言えば5位が良いところだったと思います。5位か6位だったでしょうね。他のチームの戦略ミスと運に助けられましたね」

 控えめにそう言ったが、つまるところ、シンガポールGPでのフェラーリの2位は、タイヤ戦略の賜物だった。夏休みが明けてから、アロンソが2位に入り続けている理由はそこにある。アロンソが「我々は4番手のチーム」と言うほどマシン性能に不利を抱えているフェラーリにあって、レース中も常にタイヤのデータに目を凝らし、上位浮上のカギとなるレース戦略を支える浜島の存在は大きい。

 タイヤに厳しいシンガポールで、フェラーリはあらためてそのことを痛感したに違いない。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る