【F1】名門フェラーリを支える日本人エンジニア、浜島裕英の存在感 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「マシンのパフォーマンスは十分ではないし満足ではないけど、今回持ち込んだ新パーツがきちんと機能してくれたことには満足しているよ」

 アロンソは予選順位に落胆の色を見せながらも、「7月からマシン開発の不発で被った遅れをようやく取り戻せそうだ」と語った。アロンソのマシンには新型フロントウイングなどいくつかのアップデートパーツが投入され、小さいながらも効果は着実に得られていたからだ。

 その一方で、決勝のスタートを前に浜島は語った。

「今年は例年以上にタイヤのデグラデーション(性能低下)が大きいからたいへんです。タイヤの使い方によってはレース展開が変わるかもしれないですね」

 これまで低速だったターン10のシケインが中高速コーナーに変更されたり、路面が部分的に再舗装されてグリップが向上したり、マシンそのものの進化も相まって、ラップタイムは昨年に比べて1周3.5秒も速くなっている。その分、タイヤに大きな負荷が掛かり、性能低下を加速させることになったのだ。

タイヤをいたわる走りで2位表彰台を獲得したフェラーリのアロンソタイヤをいたわる走りで2位表彰台を獲得したフェラーリのアロンソ 決勝で、アロンソは驚異的なまでのアグレッシブなドライビングを見せた。スタート直後に6番グリッドから一気に3位まで浮上し、1回目のピットストップを終えてもその順位を守ったのだ。

 そして、レースの折り返し地点に差し掛かろうかという25周目に運命の分かれ道はやって来た。トロロッソのマシンがクラッシュしたことで、セーフティカーが導入されたのだ。これによってトップを快走していたセバスチャン・ベッテルはリードを失い、2位以下との差は縮まった。

 レースは残り36周。ここでタイヤ交換をしても、そのタイヤで最後まで走り切れるかどうかはギリギリのところだった。しかしフェラーリは、アロンソをすぐにピットインさせ、残りをタイヤ交換なしで走り切る作戦に出た。

「自分たちに十分な速さがないことは分かっていた。だから、勝つための何かを見つけ出す必要があった。最初の可能性はスタートで、その次が、ライバルとは違う戦略だった」(アロンソ)

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