【F1】熱狂の表彰台。フェラーリが地元で見せた勝利への執念 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 だが、ベッテルはタイヤをうまくマネジメントして使い、最後までペースを落とすことがなかったため、アロンソに逆転のチャンスは巡ってこなかった。しかし、ウェバーの猛追を抑えきって2位を獲得。大観衆の前で表彰台に上り、地元グランプリで面目を保った。

「セバスチャン(・ベッテル)とのギャップを縮めるのは不可能だったから、僕らは最後までマーク(・ウェバー)と戦うことになった。2位というのは良い結果だし、モンツァの表彰台セレモニーは1年の中で最も感動的な場面のひとつ。できれば来年もここに戻ってきたいね。もちろん真ん中で」(アロンソ)

 レース後、浜島エンジニアはピットガレージ裏に積まれた使用済みタイヤを見ていた。アロンソがスタートから使用したミディアムの左リアタイヤには、ショルダーのピレリロゴの脇にシャープな傷跡がはっきりと残されていた。

「タイヤのショルダーのところにしっかりとカットの跡が残っています。もう少しでベルトまで届いてしまうところでしたね。何もなかったのはラッキーでした。データ上は、内圧など何も問題はありませんでしたけどね」(浜島)

 つまり、フェラーリとアロンソの地元グランプリは、スタート直後に大きく後退という悲惨な展開になっていた可能性も十分にあったのだ。

 今回のイタリアGPで、タイトル争いに名を連ねるルイス・ハミルトン(メルセデス)とキミ・ライコネン(ロータス)は、パンクやウイング破損に見舞われて下位に沈んだ。アロンソはこの2位獲得で、トップを独走するベッテルの対抗馬3人の中で頭ひとつ抜け出すことになった。

「状況はとても厳しいし、セバスチャンが何度かリタイアしなければタイトル奪還は難しいかもしれない。でも僕らはあきらめない。最終戦まで戦い続けるよ」(アロンソ)

 周囲の雑音が騒がしく、災難続きの地元グランプリではあったが、そんな中でもフェラーリはあきらめることなく勝利を追い求め、そして幸運に支えられていた。それは小さな幸運だったかもしれないが、あの熱狂の表彰台に上ることの意味の大きさを考えれば、フェラーリとアロンソにとって何ものにも代えがたい幸運だったかもしれない。

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