【F1】勝利まであとわずか。
日本人エンジニアが語った「ドイツGPの舞台裏」

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「良いぞロマン、ベッテルを仕留めるぞ!」

 ドイツGPの13周目、ロマン・グロージャン(ロータス)のレースエンジニアを務める小松礼雄が無線で叫んだ。2位グロージャンの前には、首位セバスチャン・ベッテル(レッドブル)しかいない。

 レースエンジニアとは、F1ドライバーとコンビを組んでマシンを走らせる責任者だ。そのマシンに携わる数多くの専門エンジニアやメカニックを統率し、ドライバーとともにマシンを作りあげていく。レース中はドライバーと無線で交信しながら、戦略を組み立てていく。技術に精通していることはもちろん、時にはドライバーを叱咤し精神的な支柱になることもある。F1界にドライバーの数と同じ人数しか存在しない、極めて重要なポジションだ。

レース終盤に熾烈な争いを見せたレッドブルのベッテルとロータスの2台のマシンレース終盤に熾烈な争いを見せたレッドブルのベッテルとロータスの2台のマシン ドイツGPが開催された山間にあるニュルブルクリンクには強い陽射しが降り注ぎ、決勝は路面温度43度という暑さの中でスタートが切られた。ソフトタイヤはすぐにグリップが低下し、6周もすれば上位勢は続々とタイヤ交換のためにピットへと向かった。

 5番グリッドからスタートしたグロージャンは、そんな中、13周目までソフトタイヤでハイペースの走行を続けた。暑さの中でこそ、タイヤに優しいロータスのマシン特性が最大限に生きる。

 そしてタイヤ交換をしてコースに戻ってみれば、首位ベッテルの背後2位まで浮上していた。しかも3位は遥か後方だ。ソフトタイヤをライバルの倍近くもたせたグロージャンの走りを、小松は「エクセレントな仕事だ!」と無線で褒めた。

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