【MotoGP】スーパースター復活。ロッシがオランダで2年9カ月ぶりの優勝 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 マシンセッティング面でも試行錯誤の模索が続いたが、これに関しては、前戦カタルーニャGP終了後、モーターランド・アラゴンへ移動して行なった事後テストがブレイクスルー(突破口)になったようだ。大きな課題としてずっと訴え続けてきたブレーキングに改善の手ごたえをつかみ、そのパッケージでロッシたちは第7戦のオランダGPに臨んだ。

 オランダGPが開催されるTTサーキット・アッセンは、<カテドラル(大聖堂)>の異名を持つ伝統の会場だが、予測のつかない天候の<ダッチ・ウェザー>も名物になっている。今回もその影響で、各セッションのコンディションは不安定になった。木曜午前はドライで推移したが午後はウエット。午前の走行ではロッシは4番手、午後は2番手タイム。

 アラゴンで大きな進歩を遂げたというブレーキングに関しては、「いいフィーリングは継続しているけど、判断するのは時期尚早。ドライとウエットどちらのコンディションでもポジティブ。ただ、これで充分かどうか、この状態でトップを走れるかどうかについては、まだわからない」と慎重な発言にとどまった。うがった見方をすれば、ぬか喜びではない確実な手応えを実感しつつあるだけに、見解がかえって慎重になってきた、ともいえた。

 翌日のセッションでは、午前のフリープラクティスがウエットで、午後の予選がドライ。この予選では、トップタイムに迫る2番手につけた。最終的にフロントロー獲得とはならなかったが、今季ベストグリッドの2列目4番手から決勝レースを迎えることになった。

 予選を終えたロッシは、「スピードは悪くなかったし、途中までずっと2番手にいることができた。ペースも悪くないし、バイクのフィーリングもいい。予選でフロントローを逃してしまったのは残念だけれども、今季のベストポジションで、フィーリング面でも今季ベスト」と話した。ブレーキフィーリングに関しても「新しいパッケージでさらに経験を積むこともできた。リズムもよく、うまく扱えている」と好感触を維持できている様子。

 土曜午後3時に始まった決勝レースでは、スタートをうまく決めて先頭集団の4番手につけ、好感触のブレーキングやそこからつながるコーナーの立ち上がりで、次々と前の選手をオーバーテイク。何度も最速タイムを連発したロッシは、5周目の最終セクションでついにトップに浮上した。

 中盤周回以降は少しずつ後続選手を引き離しはじめ、最大で2.791秒の差を築く力強い走りでレースを完璧にコントロール。全26周回を終えてトップでゴールした瞬間は、バイクの上で何度も両手を振り上げてガッツポーズを披露した。

<ロードレースの大聖堂>に、レース界の<カリスマ>が再降臨した瞬間だ。9万人の大観衆は、会場の至るところで大歓声をあげてスーパースターの復活を喜んだ。この人が勝つと、やはり盛り上がりのレベルが格段に違う。

「ここで勝つのは、スペシャルなことだ」「コースが魅力的だし、2009年に通算100勝を飾ったのもここだったからね」

 そして、いたずらっぽく微笑みながら、ロッシはこう付け加えた。

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