【MotoGP】序盤戦総括。「3強」とロッシの差は縮まらず (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「スタートに成功し、序盤は落ち着いて走ってタイヤを温存したけれども、その後、(フロントタイヤが)切れこむようになり、何度か<警告>があった。燃料がまだ多い状態だったのであまり攻めすぎないようにし、数周後に再び攻めてみると、また<警告>があったので、これ以上フロントに負荷をかけてはいけないと理解した。

 最後は順位を維持することにしたけど、タイヤがどんどん摩耗してゆき、エッジグリップがどんどん厳しくなっていった。今日はもっと速く走れると思っていたし、もっと攻めたかったけれども、レース状況を考慮しないといけない流れになった。とはいえ、ランキング首位を維持できたのはよかった。テストでバイクの問題点を解決して、今後のレースに備えたい」(ペドロサ)

 この両選手のレース後の言葉は、彼らのスタイルの差を如実に反映しているように思える。ライディングのアベレージ同様、精神的な面でも自己に対する管理水準が高いロレンソと、展開や状況の様子を見ながらリスクを避けて安全マージンを取りつつ可能な限りの高い位置を確実に狙おうとするペドロサの特徴が、はっきりと読み取れる。

 スーパールーキーのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は3位。予選まではコース攻略に苦労している様子で、金曜日と土曜日の取材では本人もそれを認めていたが、高い学習能力を今回も発揮して、終わってみれば表彰台を獲得した。

「フリープラクティスから予選、ウォームアップまでとても苦戦した。ホルヘやダニのほうがずっと調子がよかったから、決勝レースで彼らについていけるとは思っていなかった。スタートをうまく決めて、そこから先は最後まで限界で走った。

 セットアップもライディングも完璧ではなかったけれども、それでも彼らと一緒に走れたので、自信を深めることができた。このコースは難易度が高く、ずっと乗り方がわからなかったけど、決勝でダニの後ろについて走ってだいぶわかってきた。多くのことが学べたのでとてもハッピー」

 ここまでの6戦で、マルケスは前戦イタリアGPでのノーポイントを除き、5戦で表彰台を獲得している。今後のレースでも、今回のように金曜、土曜そして日曜午後の決勝と、セッションを重ねるごとに走りに磨きがかかり、レースを経験するたびにどんどん成長してゆくことだろう。その意味では、シーズン中盤以降のマルケスが、ペドロサとロレンソのタイトル争いに本格的に絡んでくるであろうことも容易に想像がつく。

 この三選手に加え、今季からヤマハに復帰したバレンティーノ・ロッシの本格的復活にも世界中から大きな期待と注目が集まっている。彼の場合もまた、今回のレースはシーズン前半の苦悩のありようが集約されるレースになった。

 ヤマハ復帰戦となった開幕戦カタールでは2位を獲得したが、以後は表彰台から遠ざかるレースが続いている。第4戦フランスGPでは、転倒後に再スタートを切って12位。ホームGPのイタリアGPでは、一周目3コーナーで転倒に巻き込まれてリタイア。今回は第3戦以来の4位でチェッカーを受けたが、チームメイトのロレンソとは5.874秒のタイム差だった。

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