【MotoGP】同じリタイアでも対照的。ロッシの苦悩とマルケスの進化 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ヤマハに復帰した今年、地元イタリアのファンに限らず多くの人々が、ロッシの復活を期待した。本人は今回のレースに際しては、チャンピオン奪回は難しいだろうと話す反面、土曜午後の予選を終えた段階で「明日はいいレースができると思う」「決勝に向けて、ポテンシャル(戦える力)はあると思う」と、表彰台を視野に入れた発言をしていた。

今年はカメがモチーフのイタリアGPでのロッシのメットphoto by Nishimura Akira今年はカメがモチーフのイタリアGPでのロッシのメットphoto by Nishimura Akira また、ムジェロ用に準備するスペシャルヘルメットの今年のモチーフは<カメ>。長年、小さな絵柄で愛用し続けているこのデザインを、今回は2103シーズンの自分の現状をあらわす、やや自虐的なギャグとして大きくフィーチャーした。デザインの愛らしさともあいまって、過去のデザインの中でも出色の出来といっていいだろう。

 だが、一夜明けてレースが始まったMotoGP決勝レース、ヤマハ復帰後初となるロッシのムジェロは、数十秒も経たないうちに終わってしまった。

 3列目7番グリッドからスタートしたロッシは、1周目3コーナーの進入で転倒した他選手のマシンに右後方から追突されて、コース外へオーバーラン。自らも転倒し、マシンはエアバリアに追突。砂塵のなかで所在なげに立ち上がるロッシの姿が見えた瞬間、サーキット全体を、嘆息とも怨嗟(えんさ)ともつかぬ声がおおった。レースディレクションの審査結果は、この出来事は<レースインシデント>(レース上のアクシデント)という裁定で、処罰を特に科さない旨の告知も行なわれた。

 決勝後の夕刻には、「自分は何も失敗を犯していないけど、レースがふいになってしまったのは本当に残念。レースでは、そういうこともありえる」と、半ば自らに言い聞かせるような口ぶりで振り返った。

「2年の苦労した時期を経てトップへ戻るのはとてもたいへんなことで、時間もかかるし、アンラッキーなこともあるさ」

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