【F1】地元で快勝。アロンソが見せた「マシンを生かす」ドライビング (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 予選で速さを見せたのはメルセデスAMG(予選1位、2位)やレッドブル(予選3位、8位)だったが、彼らはその速さをそのまま決勝で発揮することはできない。ペースを抑えて走らなければ、簡単にタイヤを痛めてしまうからだ。

「彼らが100%の力でプッシュしたらタイヤはダメになってしまう。でも僕らは(タイヤに優しいマシンなので)、9割くらいの力でプッシュすることができるんだ」(アロンソ)

 それゆえ、アロンソはメルセデスの2台とセバスチャン・ベッテル(レッドブル)は敵ではないと考えていた。メルセデスはバーレーンGPでそうであったように、決勝ではペースを急激に低下させて自滅していった。

 そしてタイヤ寿命に不安を抱えているベッテルは、タイヤに負荷をかけない抑えた走りでなるべく多く周回を重ねなくてはいけない。

 つまり、アロンソがピットインのタイミングを前倒しして、新品タイヤの利を生かしてプッシュすれば、レッドブルもメルセデスもその"アンダーカット"に対抗することはできないのだ。
※予定より早めのピットインで新品タイヤに交換してプッシュし、前を走っているマシンとのタイム差を縮め、前のマシンがピットストップするときに追い抜く

 ベッテルよりも1周早く、9周目にピットインをしたアロンソは、この最初のピットストップでベッテルの前に立った。フェラーリの浜島裕英エンジニアいわく「予定どおりのアンダーカット」だ。

 さらにDRS (可変リアウイング)を使って易々(やすやす)とメルセデスのニコ・ロズベルグを抜くと、アロンソは首位に立った。そこからはもう前には誰もいない独走態勢になった。

 もうひとつの勝負を決めた場面は、スタートだった。

 アロンソが、今回の最大のライバルと考えていたのは予選4番手のキミ・ライコネン(ロータス)だった。フェラーリよりもさらにタイヤに優しいマシンのロータスは、タイヤ交換回数が、フェラーリより1回少ない3ストップ作戦。だが、いかに彼らといえども20周以上タイヤを保たせるためにはペースを抑えざるを得ず、アロンソ追撃を果たせず2位でフィニッシュした。

「もしかすると4ストップ作戦の方が良かったのかもしれない。そうすれば常にプッシュすることができたからね。でも僕らはこれがベストだと思って臨んだ。今日の僕らには優勝する力はなかったということさ」(ライコネン)

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る