【MotoGP】悲願の王座獲得へ。
ダニ・ペドロサが地元で見せた強さ

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira  竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 カタールでは、大型ルーキーのチームメイト、マルク・マルケスと2位争いを繰り広げたものの、最後は徐々に引き離され、追い上げてきたバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)にもオーバーテイクされてしまい、表彰台圏外の4位で終えた。

 オースティンでは、2位表彰台を獲得したものの、マルケスに独走を許してしまう展開で、途中からついていけなくなって少しずつ引き離されてしまい、けっして手放しで喜べる内容ではなかった。むしろ、勝てないときのペドロサのパターンを象徴するレースであったように見えた。

 10代の頃から神童として将来を嘱望され、その期待を一身に背負ってチャンピオンを争いながらも、結局はいつも何かが足りずに王座を逃す。この2戦は、その筋書きをトレースしているようでもあった。このまま、ペドロサは永遠のチャンピオン候補として、最後までキャリアを過ごしていくのかもしれない。そんなふうにさえ思えた。

 しかし、今回ヘレスでのホームグランプリでは、そんな不安を自らのパフォーマンスで見事に払拭した。

 金曜日のフリープラクティスから、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)とともに一頭地を抜けたラップタイムで、決勝もこの両名の一騎打ちになるだろうと予測させた。ペドロサは「ここでは何度もレースをしているし、会場の雰囲気もとてもいい。経験もたくさんあるから、気分よく、いいフィーリングでバイクに乗れている」と好感触をアピールしていた。

 今回のレースウィークは、3日間を通じて好天に恵まれ、午後は路面温度が大幅に上昇してコンディションが厳しくなったため、タイヤのマネジメントが勝負を決すると思われた。

 ペドロサは、土曜の予選でロレンソに僅差でポールポジションを譲ったものの、日曜の決勝レースではホールショットを奪ってトップで1コーナーへ。その後、ロレンソが前に出ると、しばらく背後で様子を窺(うかが)い、6周目にふたたびトップを奪うと、あとは一気にロレンソを引き離し、周回ごとに着々とギャップを開いていった。終盤はそのギャップをコントロールしながら、悠々とゴール。11万人を越える大観衆から万雷の喝采を受けた。

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