面白いが悩ましい。F1中国GPで見えてきたピレリタイヤの特性 (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

■エンジニアが語る今シーズンのピレリタイヤの特性

 だがマクラーレンの今井エンジニアは、こうしたタイヤ批判に対して疑問の声を投げかける。

「目一杯100%のペースでレースを走ることができないというのは事実です。でもそれもゲームの一部ですから。確かにグレイニングは酷いし、扱いが楽なタイヤではないことは間違いないです。ドライバーたちもそのグレイニングのせいで苦労しているのは事実なんですが、だからといってギャンブルになってしまうようなタイヤではありません。きちんとタイヤのことを理解していれば、レースでもそのデータ通りの傾向を示してくれるタイヤです。ですから、私たちエンジニアとしてはチャレンジしがいのあるタイヤだと思っています」

 エンジニアたちは試行錯誤しながら今年もタイヤの理解を深めていっている。

 ピレリのポール・ヘンベリー(モータースポーツディレクター)も「過去2年を振り返ってもシーズン序盤は同じようなことが言われるが、すぐにチームは理解を深めてタイヤを使いこなしてしまう」と楽観視している。今井エンジニアも、こうしたチャレンジを楽しんでいる様子だ。

「面白いですよ、悩ましいですけど(笑)。『アレッ!?』って頭を掻くことも結構多いです(苦笑)。でも、それは毎年同じこと。去年の中国GPの時点のほうがみんな悩んでいたと思います。今年の方がまだ分かっているんじゃないでしょうか? エンジニアの連中は落ち着いていますよ」

 今回の中国GPのようなレースは、全力で順位を争うレースの本質からは少し外れているかもしれない。誰だって、できることならばドライバーたちが火花を散らし合う戦いが見たいというのが本音だ。

 だが、与えられた条件の中で最速を競うのがレースだ。サーキットで見ているファンにとっては複雑で少し理解の難しいレースだったかもしれないが、このレースもまた今のF1の一部なのだ。そのレースを戦い抜き勝利を収めたドライバーの栄誉も、自身のレースを戦い抜いたドライバーの功績も、いずれも貶(おとし)められるべきではないだろう。

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