【MotoGP】オールジャパン体制が誕生。「イデミツ・ホンダ・チームアジア」の可能性 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira photo by Nishimura Akira

熱心にスタッフと話し合う岡田忠之チーム代表熱心にスタッフと話し合う岡田忠之チーム代表 2012年末に第二次安倍晋三内閣へ政権が交代したことに伴い、外為市場は円安方向へ振れ、日経平均株価も上昇傾向を見せるなど、経済指標は改善の兆しを見せつつある。とはいえ、いまはまだ実体経済が好転しているわけではなく、日本社会がデフレから脱け出せるかどうかについても、実際のところ定かではない。

 このような現状で、二輪ロードレース世界最高峰といえども日本では決して広範な人気を持つわけではないMotoGPのMoto2チームをスポンサードするのは、容易なことではないだろう。出光興産潤滑油部OEM純正担当マネジャー・鍋島功継氏も、「スポンサーになるのは勇気のいる行為だった」と認める。それでも、チームを支えるメインスポンサー就任を同社が決断したのは、アジア市場を視野に入れているからだ、という。

「アジア市場、特にマレーシアやインドネシアでは二輪車関連の需要が伸びています。ガソリンを海外で売るとなると大変ですが、ミッションオイルやエンジンオイル、サスペンション用オイルなどの潤滑油では、我々もマーケットシェアを取っていきたい。現状は欧米ブランドのカストロールやアジップ、エクソンモービル等々が強いのですが、我々もアポロマークの出光ブランドをアジアを中心に販売していきたいと思っています」

 シンガポールに5年間駐在した鍋島氏は、東南アジア諸国でモータースポーツが高い人気を持つことを皮膚感覚で理解している。

「テレビでコマーシャルを打つと、15秒や30秒でも相当なお金がかかるわけで、それが東南アジアでいったいどれほどの効果があるのか。でも、マレーシアやインドネシアはバイクの国でレースが大好きな人たちですから、そこでアピールすると、『なんだあのイデミツというマークは? なるほど、ジャパニーズオイルブランドか。じゃあこのオイルを入れてみよう』という宣伝効果が非常に高いのではないか」

 と考えたのだという。だが、激戦の東南アジア市場でシェアを確保し、増大させていくのは容易なことではない。現状では、出光興産のシェアはひと桁台にすぎない。ある意味では、ゼロからの挑戦、といってもいいだろう。鍋島氏らは、そんな自分たちのありようを、結成されたばかりのチームタディの姿に重ね合わせている。

「世界を転戦するバイクのレースはヨーロッパの文化ですが、そこにアジア人が挑んでいく、というところに非常に感銘を受けました。そのコンセプトに共鳴したからこそ、思いが重なって、ぜひともスポンサードをさせていただきます、という話になったわけです」

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