【F1】可夢偉の2012年の自己採点は?「普通に走れていれば余裕で上に行けていた」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

――スタートシステムのセッティングミスによる発進加速ミスも何度かありました。

「うん、あれは最後までダメやったけどね(苦笑)。エンジニアも『わからへん』って言うてたからね(苦笑)。とりあえず『あんまりリスクを取らずに頑張ってくれ』って言うしかなかった。

 今年のマシンは設計の段階から素材を変えたりいろいろと(工夫を)やっているから、去年と比べても今年の(スタートシステムの扱い)は難しかったみたいです。でね、おカネのあるチームやったらダメって分かった瞬間に新しいシステムをバン!と入れて解決したと思うんですけど、ザウバーはおカネがないから頑張ってこれを使い続けるしかないっていう状態やったんです。年間のパーツを最初にまとめて買うでしょ? だからもし途中で変更することになったら、使わへん分が無駄になるわけです。それを売ることもできないし、新たに買う予算もないから、結局そのままいくしかないっていうね(苦笑)。よくないのは分かってたけど、そこはもう、チームの予算の差ですよ。ビックリするよね、理由が『おカネがないから』やって(苦笑)」

――チーム予算の差がそんなところにも表れているんですか。

「うん、ピットストップだって、シグナルを速くしたり油圧ジャッキを使ったら速くなるのは分かってるけど、なんで使わへんのかっていうたら『おカネがないから』やからね。おカネがないとこうなるんやっていうことですよ。

 あとピットのミスが連発したのは調査不足もあった。金属って熱で膨張するじゃないですか? 走ってるうちに熱でホイールナットが膨張して大きくなるから、通常の状態でギリギリで(ホイールガンに)はまってたものが、すんなりはまらなくなっていて。単純に少し削ってればよかったっていう、『なんだそれ?』みたいなこともあったりね。最先端って言われながらも、そういうところは意外とアナログやったりするんですよ」

――チームの作業ミスによるトラブルも多かったですよね。確実にトップ3が狙えたスペインGPの予選でもハイドロトラブル(油圧システムをコントロールする電子制御の不具合)。今年になってスタッフの入れ替わりもあり、開幕前のテストでもミスが少なくなかった。

「そう、多かった。それでもやるしかないから。僕ら(ドライバー)は失敗なしでやって当たり前みたいなところがあるけど、まだ経験も浅いメカニックの人たちに、失敗なしでやれっていうのは厳しいと思うし。トップチームやったらサブのメンバーがいるから、失敗したら簡単にスタッフを代えられるけど、ザウバーはそんなのいないから。そのメンバーでやり遂げるしかないんですよ」

――そんな今シーズンを自己採点すると、総合で何点?

「60点!」

――結構低いですね?

「まぁ、運の悪さマイナス20点、あと10点はボウリング(イギリスGPでのピットクルーをはねるミス)してしまったのと(苦笑)。......あと何があったっけ? あ、韓国の1周目のミスもマイナス10点いっとこ(笑)」

――自分のドライビングとしては?

「自分のドライビングとしてはそんなに悪くなかったんですけどね。もうちょっと行ければいいかな、くらいで。だからまぁ70点くらいじゃない?」

――ポイントではチームメイトのペレスに対して「60対66」で負けてしまいましたけど、入賞回数では「9対7」で上回っています。

「最後のブラジルGP、(ポイントでペレスを上回るためには)もっとポジション上げないとダメやったでしょ? だから(前にいたシューマッハを追い抜きに)行ってみよと思って。あのまま8位で終わっても僕的には何にも変われへんからね(結果、シューマッハと接触して可夢偉はスピン。8位から9位に順位を落とした)。

 惜しかったよね。いやまぁ、余裕で上に行けましたけどね、普通に走れていれば。本当は100ポイントくらい獲りたかったけど......でも、1シーズン普通にレースができてたらそのくらい獲れてたペースやったと思うから」

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