【F1】3連覇達成。レッドブルはなぜ短期間で強くなったのか? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ブラジルGPは雨量が刻々と変わる難しいコンディション、接触によるダメージでマシンはドライブしづらく、さらには無線まで壊れピットとのコミュニケーションがうまくできない。そんな中でもベッテルは走り切り、フェラーリのフェルナンド・アロンソにわずか3ポイント差でタイトルを勝ち獲った。そこにはチームへの信頼とチーム全員の思いを背負って走る強さがあった。

「これは今日のレースだけで成し遂げられたものではない。僕がこのチームにやって来たその時から、コース上でもファクトリーでも、1年中ものすごい規模の努力が積み重ねられてきたんだ。それによって成し遂げられたことだ。僕は(注目を浴びる)とても幸せな立場にいるけど、チームの中のひとりでしかない。ガレージやファクトリーで働いているすべてのスタッフひとりひとりと同じだ。

 今年は開幕から7戦で7人の勝者が生まれ、誰にもアップダウンがあった。接戦が多く、タフなシーズンだった。でも、どの瞬間もチャンピオンシップ(の結果)に直結しているんだと僕は分かっていた。最も重要なのは、シーズンを通してプッシュし続け、自分たちを見失わなかったことだ。大切なのは、自分たちを信じ続けることだと思っていたんだ」(ベッテル)

 ホーナー代表は語る。

「レース前に話し合い、はっきりさせていたんだ。ライバルが何をやろうとも、我々はそれに動じないでいようってね。レースはライバルがどうこうで決まるものじゃない、自分たちがベストを尽くし最大限の結果を手に入れることで決まるんだってね。最も重要なのは、自分たちのことだけに集中することだ」

 1年間で1周あたり2秒とも2.5秒とも言われるほど速くなり、進化を遂げるF1の世界でトップレベルの戦いを続けるためには、常に進歩し続けることが必要とされる。マシンが速いのは当たり前。その速さを維持し続けるためには、さらなる努力と正確な開発力が必要となる。そしてレースでは完璧な戦略と、瞬時の判断力、そしてチームとしての対応力が問われる。それらがすべてそろって初めて、頂点に立つことができる。

 3連覇を達成した2012年は、若いチームから成熟したチームへと変化しつつあったレッドブルにとって、一流チームへと羽ばたく大きな転機になったシーズンだったのかもしれない。

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