2012.11.20

【F1】ベッテル対アロンソ。
直接対決なきチャンピオン争いは最終戦へ

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 しかし、レース中盤を過ぎてタイヤ寿命の心配がなくなったハミルトンは、プッシュを開始した。それがベッテルをパスする結果につながり、その後もベッテルにDRS使用のチャンスを与えなかった理由だ。予選では圧倒的な速さを誇るレッドブルだが、決勝のペースではマクラーレンとの差は皆無に等しいのだ。

 ベッテルは「優勝を失ったのは悔しいけど、でも今日の僕らはやれることはすべてやったよ」と満足げな表情を見せた。タイトル確定を逃したが、ブラジルでの最終決戦に向けて余裕を見せている。

 しかしベッテルには、ひとつの不安要素がある。

 今回も僚友のウェバーがオルタネーター(発電機)のトラブルに見舞われ、たったの16周でリタイアを余儀なくされている。これはエンジン供給元のルノーから提供されているパーツだが、これまですでにヨーロッパGP、イタリアGPと2度のトラブルを抱えており、対策品が用意されたにもかかわらず、またしてもトラブルが発生してしまったのだ。

 空力性能追求のためにエンジンカバーを極端にコンパクトに絞り込むレッドブルのスタイルが、カウル(空気の流れを調整する覆い)内の温度上昇を招き、オルタネーターとKERS(Kinetic Energy-Recovery System/運動エネルギー回生システム)のバッテリー周りに起因するトラブルの要因となっている可能性が高いと言われている。

真夏のレースとなる南半球の次のブラジルでは、これが彼らのアキレス腱になりかねないのだ。ベッテルは「あのモンツァ以降、しっかりと学習してきたから、来週に向けては大丈夫だよ」と語ってはいるが……。

 一方のアロンソは、ウェバーのリタイアによって3位表彰台を手に入れた。ベッテルとの差は3ポイント開いただけに過ぎない。しかし今回もベッテルとの直接対決が不可能だったことは明らかだった。

「予想外の表彰台だよ。今週の僕らにレッドブルやマクラーレンと戦うだけの速さはなかったからね。これだけ厳しい状況の中で、こうして表彰台が獲れたことは僕らにとって勝利のようなものだ。昨日の時点で、たった3点差で済むなんて誰も思っていなかったはずだよ」

 おそらくこの構図はブラジルでも大きく変わりはしないだろう。直接対決なきチャンピオン決戦。その結末がどんなふうに転がるのか、それは決勝レースの最終ラップまで分からない。

 ベッテルは「ポイントのことは考えず、目の前の自分たちのレースに、自分たちのやるべきことに集中するだけだよ」と語る。今のレッドブルのマシン性能があれば、彼にとっては普通にレースを走り切るだけでタイトルが決まる可能性は高いのだから。