【F1】予想外の好レース。波乱のアブダビGPで展開されたバトルの舞台裏

  • 米家峰起●取材・文 text by YoneyaMineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

波乱のアブダビを制したのはキミ・ライコネン。F1復帰後初優勝となった波乱のアブダビを制したのはキミ・ライコネン。F1復帰後初優勝となった「今シーズンで最も静かな面白みのないレースのひとつになるだろう」

 今年のF1を面白くしたと絶賛されたタイヤメーカー、ピレリのポール・ヘンベリー(スポーティングディレクター)でさえそう言ったアブダビGPの予想は、見事に外れた。抜きにくいサーキットのレイアウトに、ワンストップしかあり得ないレース戦略。面白くなる要素はなかったはずだった。

 しかし夕暮れに始まったトワイライトレースは、極めてエキサイティングなフィニッシュを闇夜の中で迎えた。

 波乱は、チャンピオン争いをリードするセバスチャン・ベッテル(レッドブル)が予選終了後にコース上でストップしたところから始まった。1周余分にアタックを行なったベッテルのマシンにはもう850ccの燃料しか残っておらず、予選後の車検の規定で必要とされている1リットルがなかったことから失格が言い渡されてしまったのだ。

 これによりベッテルは最後尾グリッドとなったが、チームはそれよりもピットレーンからのスタートを選んだ。1周を速く走るセットアップではなく、追い抜きが可能なセットアップに変更を施したかったからだ(最後尾グリッドからのスタートであれば、予選後のセットアップ変更は許されない)。

 スタートで首位に立ったのは、初日から圧倒的な速さを見せポールポジションを奪ったルイス・ハミルトン(マクラーレン)。2番グリッドのマーク・ウェバー(レッドブル)は加速が鈍く、むしろ4番グリッドのキミ・ライコネン(ロータス)が好加速で一気に2位まで浮上してきた。

「僕らのクルマはレースペースが良いから、スタートが最大のカギになると分かっていた。勝てるだけの速さがあったとしても、自分たちよりも遅いクルマの後ろになってしまうと抜けないし、どうしようもないからね。今日は本当に良いスタートが切れたね」(ライコネン)

 ベッテルとチャンピオンシップを争うアロンソ(フェラーリ)は、ライバルが後方に沈んだこの期に一気にポイント差を縮めたいところ。予選は6番グリッドと振るわなかったが、勝負所をわきまえたアロンソは1周目から果敢にアタックしてウェバーをかわし、4位まで上がってきた。

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