【MotoGP】地元選手が大活躍したマレーシアGPで考えた「日本人ライダーの不振」 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 決勝レースでも、カイルディンは今までにない強さを見せた。序盤は他選手の背後で様子を見て、降雨とともに勝負をしかけた。

「今までの経験から、最初の9周は後ろにつけて様子を見た。やがて雨が落ちてきて、レースが中断するかもしれないと思って勝負に出たんだ」

 そこからは最終ラップまでトップを走り、マシンの姿がメインストレートに戻ってくるたびに、7万7000人の観衆から大きなどよめきが起こった。最終ラップもトップで1コーナーに入っていったが、
「バックストレート手前でミスをしてサンドロ(・コルテーゼ)にパスされてしまった。最終コーナーで勝負しようとしたら、バンプ(路面の凹み)に乗って転びそうになり、2位確保に頭を切り換えたんだ」

 それでも、マレーシアにとっては史上初の快挙であること間違いはない。豪雨の中で行なわれた表彰式では、トロフィーを掲げるハイルディンに大喝采が送られた。

 そして、この結果に発奮したのが、Moto2クラスにワイルドカード参戦した同じくマレーシア人のハフィズ・シャーリンだ。スペイン選手権に参戦する18歳のシャーリンは、雨のレースを得意としている。決勝は9列目27番手からのスタートだったが

「得意のコンディションだったから、ひとりずつ抜いていった。27番手だったことは気にせず、目の前の選手を見るたび、『抜けるはずだ』と思ってパスしていった」

 あっという間にトップ集団に追いつき、9周目には先頭に立ってしまう。シャーリンの走りは自信に満ちており、走行ラインも他の選手たちとは明らかに違っていた。<世界選手権の選手か何か知らないが、ここは自分のサーキットだ。コンディションが同じなら負けやしない>-そんな心の声が聞こえてきそうな、気迫に満ちたライディングだった。

 だが、怒濤の追い上げの最中に「タイヤを使い果たして、リアのトラクションがなくなってしまった」ために、最後はトップ3から離されて4位に終わった。

 とはいえ、世界のトップライダーを向こうに回して堂々と渡り合った威勢の良さに、観客はまたもや大興奮。これだけ自国選手が活躍すれば、盛り上がらないわけがない。翌日の新聞はいずれも一面にカイルディンの表彰台を掲載し、シャーリンの活躍もスポーツ面で大きく取り上げられた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る