【MotoGP】
天才ロッシの能力は錆びつかず。地元で今季最高の2位獲得

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 前戦の第12戦チェコGPでは前半戦に好位置を走る姿が見られたものの、早い段階でタイヤを消耗して中盤周回以降はずるずると順位を下げ、終わってみればトップから34.514秒の大差をつけられ7位でフィニッシュ、という平凡な内容だった。そのチェコGP後には、今回のレースが行なわれるミザノサーキットでテストを実施。新たに投入したフレームとスイングアームで80周を走り込み、今回の第13戦に備えた。

 そしていよいよ、自宅から10kmという文字どおりのホームGPを迎えた。土曜の予選は2列目6番グリッド、とまずまずの手応えを掴んだ様子だが、それでもロッシは慎重な姿勢を崩さなかった。

「2列目スタートで、ポールポジションから0.7秒差なのは明日のレースに向けて悪くないと思う。新しいフレームとスイングアームも好感触。ただし、本当によくなったのかどうかはレース本番になってみないとわからない。とはいえ、新しい車体でフロントの安定性は良くなったし、旋回時のリアの挙動も改善している。明日のレースは速い選手たちが最初から飛ばすだろうから、がんばってついていきたい」と、冷静な口ぶりで話した。

 そして、日曜の決勝では冒頭に述べたとおり、2位でチェッカー。2011年にドゥカティへ移籍して以来、ドライコンディションでの自己ベストリザルトを地元大観衆の前で記録した。

「今までのレースキャリアでも屈指の出来」と、レース後に自賛したほどの好スタートを決め、2番手につけたロッシは、早い周回に逃げを打ったホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー)からは離されてしまったものの、それでも背後に迫る後続選手に最後まで前を譲ることなくゴールラインを通過した。

 また、今回の2位獲得は、ロッシにとってドゥカティ自己ベスト記録という以外にも、もうひとつ大きな意味のある表彰台だった。ミザノサーキット周辺の地域は、ロッシ以外にも多くの人気ライダーを輩出している。昨年のマレーシアGPで、レース中のアクシデントにより逝去したマルコ・シモンチェッリもそのひとりだ。

 明るい性格とユーモラスな立ち居振る舞いで次世代を担うスーパースター候補と期待されていたシモンチェッリを、ロッシは弟のようにかわいがっていた。そのシモンチェッリの早すぎる死を悼み、サーキット名は今年から「ミザノワールドサーキット・マルコ・シモンチェッリ」と改称された。

「今回は特別なレースだった。マルコの名前が冠せられたサーキットで獲得した2位だから、この表彰台を彼に捧げたいと思う」

 そう真剣な面持ちで語った後、雰囲気を和らげるためだろう、冗談交じりの言葉を継いだ。

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