【MotoGP】タイトル争いは一騎討ちへ。両雄が見せたチェコでの名勝負 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 しかし、この日のペドロサはさらにもう一度勝負に出た。ブルノサーキットは前半区間がだらだらとした下りで、後半が急激な上りという構成になっているが、この最終セクションのシケインにペドロサは狙ったラインで進入。左から右への切り返しでアウト側からロレンソをオーバーテイクしてみせた。ライバルが得意とするスタイルのお株を奪う乾坤一擲の大逆転で、0.178秒早くチェッカー。前戦インディアナポリスGPに続き、2週連続のレースで2連勝を達成した。

 今回のレース前に、ペドロサは「ラグナセカ(第10戦)から使用しはじめた車体は、今までずっと神経質だったコーナー進入時の自由度が従来よりも改善されている」と語っている。ライダーの思いどおりに操れるマシンポテンシャルの上昇も、今回の逆転劇に大きく寄与したことはまちがいないだろう。

 一方のロレンソは、「最後の周回は戦略も何もなくてダニも自分も全力だった。ただ、唯一敗因があるとすれば、最後の上りセクションで失敗してしまったこと」とレース後に話したが、その表情からは、全力を尽くして走りきったさばさばした様子もうかがえた。

 この結果により、12戦を終えた両名の獲得ポイントはロレンソの245に対しペドロサ232。シーズン2/3を終え、残り6戦をわずか13点差で迎えることになる。ランキング3番手にはペドロサのチームメイト、ケーシー・ストーナーがつけているものの、インディアナポリスでの転倒が原因のケガで右足首の手術を行い、今後数戦の欠場は必至。チャンピオン争いからは完全に脱落したといっていいだろう。

 ペドロサはホンダがどうしてもチャンピオンを獲らせたい選手、と以前から言われており、2006年に弱冠20歳で最高峰クラスへ昇格して以降、毎年有力候補のひとりに挙げられてきた。アベレージの高さでは文句なく群を抜いている。だが、いつも何かが足りずに王座へ手が届かなかった。今シーズンも第4戦フランスGPで4位を獲得した以外は毎戦で表彰台に上る水準の高い走りを見せているものの、優勝は第8戦ドイツGPまでなかった。そんなところに、彼の「何かもの足りなさ」が反映されている。

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