【F1】上位を狙う可夢偉の戦略。「僕にも表彰台のチャンスはある」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)


「まぁ、しょうがないですよ、エンジンが遅いんやから」(Rd.7 カナダGP決勝/9位)

 パワー最強のメルセデス・エンジンに比べ、高速コースではフェラーリ・エンジンの非力さが大きな不利になる。
「レース(で競り合うこと)を考えたらダウンフォース(空力)を削って直線を速くするしかないけど、あれだけ軽くしても最高速は(メルセデス・エンジン搭載の)フォースインディアと同じくらいですからね(苦笑)。しかも最高速は同じでも、立ち上がりはこっちの方が遅いから。これじゃあ戦いようがないですよ(苦笑)」
結局、レースでもフォースインディアをなかなか抜けずに苦しむことになった。


「来るべきチャンスが来れば僕にも(表彰台の)チャンスはあると思う」(Rd.7 カナダGP決勝/9位)


 チームメイトが2度目の表彰台獲得。ペースを抑えてタイヤをいたわりピット回数を減らすという、後方グリッドからのスタートであるがゆえのギャンブル的な戦略が見事に成功した結果だった。可夢偉は対照的に、計算上は速くゴールできる3ストップ戦略で9位。
「ギャンブルするか安全パイで行くかっていうだけで、安全パイでいって安全に9位でフィニッシュしたっていうだけですね」
 チームメイトの表彰台にも「僕自身は今週、仕事としては悪い仕事をしてるわけじゃないし、チームとしても良い結果やからもちろん喜んでるし。みんながネガティブに考えてるだけですよ(苦笑)」と、焦りを心配する周囲を逆に気遣う一面も見せた。事実、チームは可夢偉の仕事ぶりを充分に理解しており、結果だけを見て評価を不当に下げたりはしていないので安心していいだろう。


「このコンマ1秒が、もうちょっと簡単かと思ってたけど、最近むちゃくちゃ難しいってことが分かりました(苦笑)」(Rd.8 ヨーロッパGP予選/7位)

 大混戦となっている今シーズンのF1では、1秒差に10~15台がひしめき合い、0.1秒の差が5つも6つものポジションの差になって表れることも少なくない。その中でマシンが0.1秒速くなればそのアドバンテージは非常に大きいのだが、どのチームも重箱の隅をつつくような開発をして現状のパフォーマンスを手に入れているだけに、さらなる0.1秒の向上は非常に難しくなっているのだ。だからこそ、レース週末を完璧に戦い、ドライバーが100%の力を発揮できるようにすることが重要なのだが、それがまだ果たし切れていないのが今季のザウバーだ。

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