【F1】可夢偉、自己最高の4位で後半戦へ。「あと1コなんやけどなぁ」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)


 決勝の朝、可夢偉の良き理解者であるチームCEOのモニシャ・カルテンボーンは、可夢偉担当レースエンジニアのフランチェスコ・ネンチを呼び、向かい合ってじっくりと語りかけた。時に戦略決断が遅れ、失策の一因となっていた、いわば可夢偉のレース運営責任者だ。

「自信を持って、素早く決断を下しなさい。それが大切なことです。たとえ間違ったとしても、誰もあなたを責めたりはしませんから」

 可夢偉とネンチは、スタート直前までどちらのタイヤでスタートするかの決定を遅らせることにした。

 スタート前のグリッド上で、可夢偉のクルーたちは緊張感に包まれていた。彼らが視線を送るのは、フォースインディアのマシンがとまっている9番グリッド。

「直前までどっちのタイヤで行くか全然決まってなくて、(ポール・)ディ・レスタの反対のタイヤで行こうっていうのが今回の僕の作戦だったんです。あっちを見てからね。前にいればこっちの方が速いのは分かってたんですけど、マトモに勝負しにいったら大変なんで、アドバンテージを持った状態で抜きにいけるようにって考えて」

 いつもレースでペースが遅く、大渋滞の原因となるフォースインディアのマシンに引っかからないことが、思い通りのレースをする上でカギになる。

 ソフトなら黄色、ミディアムなら白色のロゴが印字されているが、レース前のタイヤはゴムを温めるタイヤウォーマーに包まれていて、どちらなのかを判別することは難しい。だが、チーム内管理のために描かれた数字マーキングやクルーの準備の様子などから、推測は可能なのだ。

 クルーがマシンから離れなければならない直前になって、ライバルのタイヤが判明した。ソフトタイヤだ。

 急いで可夢偉のマシンにミディアムタイヤを履かせ、その作戦は見事に成功した。可夢偉はじわじわとポジションを上げ、ピットストップ後にはライバルよりも新しいタイヤの利を生かして次々とオーバーテイクを果たした。

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