【MotoGP】決断の時迫る。ロッシの来季をめぐって飛び交う数々の「噂」 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ドゥカティに移籍後、特に今年はロッシがマシン開発について語るときには「シーズン後半の戦闘力アップ」という表現を用いるのが常だった。それが、第8戦ドイツGPで上記のムジェロ事後テストについて言及した際、「後半戦と将来に向けてのアイディアはある」「来年の方向性がこれでいいかどうかを見る、重要な機会」と語った。来シーズンのマシン開発について自ら触れたのは、おそらくこのときが初めてだと思う。

 また、このレースにはドゥカティを買収したアウディ経営陣が決勝レースを視察に来ていた。レース後にロッシは彼らと会ったことを認め、今後について具体的な話をしたわけではない、と前置きした上で「レースに対して非常に熱心な姿勢であることはよくわかった」とも発言した。

 そして、イタリアGPでは、現チームメイトのニッキー・ヘイデンと、ヤマハサテライトからドゥカティへの移籍が噂されているカル・クラッチローについて、「どちらの選手が(自分のチームメイトに)相応しいのかドゥカティに示唆するなんて、僕にはそんな権限はないよ」とも語っている。

 これらの発言について、来年の活動に言及したのはあくまで建前上の社交辞令であり、本心は依然として移籍に傾いている、と推測することももちろん可能だ。実際にロッシは、「アウディがドゥカティのレース活動にてこ入れを行なったところで、マシンが急激に良くなるとは思えない。自分には、もうあまり(現役選手としての)時間が残されていない」と親しい者に語ったという話も聞く。

 だが、アウディ(=ドゥカティ)がロッシの慰留に全力を尽くしているのは、おそらく事実だろう。また、ロッシがたとえ移籍を狙ったとしても、ホンダにはすでに空席がなく、ヤマハファクトリーの残る1席は競争率があまりに高い。ヤマハ側が現在のロッシにどの程度の魅力を見いだすか、ということも明白ではない。

 そのような状況のなか、イタリアGP決勝日の朝に突拍子もない噂話がごく一部の者たちの間で囁かれた。

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