【MotoGP】一触即発。緊迫度を増すポイントリーダー争いの行方は? (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu


 さらに、
「それよりも残念なのは、次戦で彼に最後尾スタートというペナルティを与えたレースディレクションの甘すぎる判断だ。2005年の日本GP(でロレンソが他選手を巻き込む転倒を発生させたアクシデント)では、今回の彼ほど危険行為ではなかったのに、自分は一戦出場停止処分を受けた。(2003年パシフィックGPで他選手に絡む多重転倒劇を起こした)ジョン・ホプキンスは、今回の彼と同じくらいの危険な行為で一戦出場停止になっている。それらの事例と比べると、今回の処分はまったくフェアじゃない」
 と憤懣(ふんまん)やるかたない様子。

 そして、その一方で、
「金曜の朝から使い始めたニューエンジンがダメになってしまったけれども、レースディレクションから新しいエンジンを使ってもいい、と言われた。その判断には感謝しているし、公正な判断だと思う」
 とも述べた。

 この言葉には説明が必要だろう。

 MotoGPのルールでは、プロトタイプマシンに乗る選手は年間6基までのエンジンを使用できる、と定められている。つまり、今回のアクシデントでエンジンを故障させられた埋め合わせに、特別に7基目のエンジンを使用してよい、とレースディレクションが請け合った、というのだ。

 しかし、ロレンソが語ったこの話は、鵜呑みにできない。

 ルールブックには、<損傷したエンジンを(修理などの過程を経て)再び使用した場合には、新エンジンとして扱われ、適宜罰則が適用される>と明記されているからだ。これは、ニューエンジンを7基目として使用する場合にも同様に扱われ、相応の罰則処分が下される。

 昨年の第14戦アラゴンGPで、ドゥカティはバレンティーノ・ロッシに対し7基目のニューエンジンを使用し、その際にロッシは決勝レースでピットレーンスタートの処分を受けている。今回のロレンソは不運な被害者の立場とはいえ、彼に特別な甘い裁定を許せばかえって競技の公平性を損ねることになってしまう。おそらく、ロレンソに7基目の使用が罰則なしで許可されるような事態には、至らないのではないだろうか。

 そのロッシは、今回の一件に関しては、次のように自らの印象を述べた。

「あれはたしかに大きな過失だったと思う。セクションタイムで見ると、このレースウィークを通じてバウティスタはあの区間がとても速く、全選手でも1、2番だった。だから、1コーナーでのブレーキングにもきっと自信があったのだろう。それにしても、さすがに進入速度が高すぎたしブレーキも明らかに遅すぎたね」

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