【MotoGP】残留か移籍か?
どうなる天才バレンティーノ・ロッシの去就

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu


 むしろ皆の関心事は、ドゥカティのファクトリーライダーであるバレンティーノ・ロッシが来季に向けてどのような行動を取るのか、ということにある。

 ロッシは第6戦を目前に控えた木曜に、ロレンソのヤマハ契約更改は自分の来季の去就決定にさほどの影響を及ぼさない、と話し、「ラグナセカ(第10戦USGP)の結果を見たうえで検討をしたい」と語った。この第10戦にはドゥカティのファクトリーから現在の問題を改善する新エンジンが届くことになっており、そのパフォーマンス次第で、低迷を続けるドゥカティの戦力向上を期待できるかどうかを見極めたい、という意味だ。

 だが、この第6戦でもロッシは従来同様に非常に厳しい状況で戦うことを余儀なくされ、優勝したロレンソから36秒遅れの9位でレースを終えた。チームメイトのニッキー・ヘイデンも序盤こそトップグループにつけていたものの、途中から一気に順位を下げて最後は7位。いずれにせよ、マシンの戦闘力に大きな問題を抱えていることが明らかなリザルトだ。

 この問題の解決は、エンジンに対してもさることながら、昨年来大きな変更を続けてきた車体に対しても求められている。レース後のロッシは、いつものように「マシンの戦闘力を上げることが最優先課題」と無表情に繰り返した。だが、一部の情報では、ラグナセカで投入するエンジンは従来の問題を解決できる意欲的なものからほど遠く、車体の改善に関しては、ロッシは「すでになにも期待をしていない」とも言う。

 現在の彼の心境は、できれば2013年はホンダかヤマハへ、というのが偽らざる本心だろうと容易に想像できる。とりわけ2004年から7年間を過ごしたヤマハに対しては、あの常勝マシンを作りあげたのは自分だという強烈な自負があり、郷愁に近い気持ちもあるようだ。

 ヤマハモーターレーシングのリン・ジャーヴィスは「いつでも裏口を開けて待っているよ」と、かつてヤマハの古沢政生がロッシに述べたのと同じ科白(せりふ)をシーズン初頭に公言しているが、それが社交辞令以上の意味を持つのかどうかは疑問も残る。さらに、古沢とともに常勝軍団を作り上げた頃の唯一無二の能力をいまだにロッシ自身が備えているのかどうか。ホンダからヤマハに電撃移籍した2004年の彼は、25歳。現在は33歳。もはや若くはない。一般的には、アスリートとしてのピークを過ぎている年齢だ。

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