【F1】現役復帰から2年半。「皇帝」ミハエル・シューマッハがつかんだ復活の手応え (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 現実的な目標として表彰台が見えていただけに、シューマッハの落胆は大きかった。

「僕にどう言えというんだい? こんな風にレースを終えなければならないのは、単純に残念だよ。スタートの接触もあったけど、燃圧のトラブルが出てしまってはどうしようもない。今日は密かに表彰台フィニッシュができるんじゃないかと期待していたんだ。だからこそ、二重の意味で残念だよ」

 レースは繰り上げポールとなったマーク・ウェバー(レッドブル)が堅実な走りで優勝した。もしシューマッハにペナルティがなく、ポールポジションからスタートしていたなら、レース展開はどんなものになっていたのだろうか。そう考えると、表彰台獲得は、決して幻ではなかったのではないかと思える。

 だが、表彰台が現実的に手の届く位置にあることを実感したシューマッハは、確実に進化を遂げたはずだ。

「よかったところを次のカナダへの追い風にしたい。モントリオールのサーキットは僕らのクルマに合っているはずだし、次こそはクリーンな普通のレースをしたいと思っているよ」

 必要なのはトラブルや不運のない“普通の”レース。それができれば表彰台は決して遠くはない。シューマッハはそう考えているのだ。

「皇帝」の表彰台登壇は、まもなく実現するかもしれない。

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