【F1】現役復帰から2年半。「皇帝」ミハエル・シューマッハがつかんだ復活の手応え (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)


 6番グリッドからの決勝スタートになったシューマッハだったが、予選での速さは掛け値なしのタイム。だからこそ、レース前のシューマッハは心の中にある期待を抱いていた。

 表彰台。現役復帰から2年半、43戦を経てもなお達成できていないその結果を、モナコで手中にできる可能性が限りなく高いとシューマッハは感じていたのだ。

 メルセデスAMGのマシンは空力性能が充分ではなく、コーナリングの速さではライバルたちに劣る。逆に言えば、空力性能が必要とされる高速コーナーのないモナコでは、その不利が出にくく、ドライバーの腕でカバーできる範囲も大きいのだ。

 それに加えて、今季メルセデスAMGが他に先駆けて発明したダブルDRS(リアフラップを寝かせて空気抵抗を削減する通常のDRSだけでなく、それに連動してフロントの空気抵抗も減らす仕組み)が、空気抵抗の大きなモナコでは効果を発揮するという側面もあった。

「この週末を迎える前から、ここのサーキットは自分たちのクルマに合っていると思っていたし、トップ争いができたのもそんなに大きな驚きではなかったよ。でも正直に言うと、木曜のフリー走行、そして今朝のセッションの後でさえ、ポール争いができるとはまったく思っていなかったけどね」

 かつてモナコGPですばらしい走りを披露してきたシューマッハだが、実は初日のセッションではタイヤをガードレールにぶつけ、あわやという場面も経験していた。しかしそれを乗り越えてポールポジションを獲得するだけの速さと自信が、モナコでのシューマッハにはあったのだ。

 表彰台の可能性を感じながら迎えた決勝は、ロマン・グロージャン(ロータス)との接触で幕を開けた。8番手に順位を落とし、ペースが伸び悩むキミ・ライコネンの後ろでタイムロス。そしてレース中盤を迎えたところでエンジンの燃圧が落ち始め、最後はリタイアを余儀なくされてしまった。

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