【F1】5戦で5人のウィナー。空前の大混戦の要因を考察する (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 つまり、予選で即座にタイヤを温めて性能をフルに発揮させると同時に、決勝ではタイヤをいたわり、できるだけ長くハイペースを保つことができるセットアップを見つけ出すことが重要になる。

 予選のパフォーマンスが十分でなければ、後方グリッドからのスタートとなり、どれだけペースが良くても集団の中では性能と速さを十分に発揮できない。前走車の背後を走ると乱れた気流を受けることとなり、ダウンフォースが十分に獲得できずにマシンが滑ってタイヤを痛めることにもなるからだ。

 しかし、予選パフォーマンスを追求しすぎるとタイヤに厳しいマシンセットアップとなり、決勝ではペース低下の進行が早まってしまう。

 それ以外にも、マシントラブルを未然に防ぐこと、決勝のスタートできちんと上位に浮上しておくことや、ピット戦略、コース上でのバトル、そして運など、さまざまな要素がひとつでも欠けると、大きくポジションを落としてしまう結果になる。

 従来なら、わずかなロスで済んだものが、大接戦の今季では0.3秒で5つも6つものポジションダウンにつながってしまうのだ。

「この5戦で5人の勝者が生まれているし、今年は、『何が起きても不思議じゃない』と言っても過言じゃないでしょうね。僕らには良いクルマがあるし、良い成績を収めるためのチャンスも十分あると思います。もちろん結果は色んな要素によって左右されますけど、成功を手に入れるために必要なのは、レースの週末全体を通して、たとえどんな小さなことでも、すべてを完璧にまとめ上げることなんです。とにかく今はそれを目標にしています」

 小林可夢偉がそう語るように、今季はレースウィークのすべての要素を完璧に仕上げることが極めて重要になっている。その成否によって、上位チームの大崩れもあれば、下位の大躍進もある。

 大混戦はまだまだ続くだろう。年間11名もの勝者が生まれた大混戦の1982年に、わずか1勝のケケ・ロズベルグがチャンピオンに輝いたような予想外の展開も十分にあり得る。

 各チームにとって極めて過酷なチャンピオンシップになるが、我々見る側にとって2012年は最高のシーズンになりそうだ。

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