【F1】5戦で5人のウィナー。空前の大混戦の要因を考察する (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 まず、今季は各チームのマシン性能差が極めて拮抗していることが最大の要因と言える。

 昨年までのブロウンディフューザー(エンジンの排気をダウンフォース発生に活用する装置)が禁止となり、ライバル、特に開発予算の少ないチームに大きな差をつけるアイテムが不在というのがその理由だ。

 予選で12、3台が1秒以内にひしめくことは当たり前で、第3戦中国GPでは0.3秒内に15台が入るほどの大混戦だった。

 マクラーレン、レッドブル、メルセデスAMGの3強が絶対的な優位を保っているわけではなく、その下には中団チームが控えており、わずかなミスでも犯せば形勢は一気に逆転してしまうのだ。逆に、わずか0.2~0.3秒でもゲインする何かを発見できれば、中団チームでも大きくポジションを上げることが可能になる。

 たとえばスペインGPのフェラーリは、「実際のポジションは6~8位といったところだろう」(フェルナンド・アロンソ)という状態ながら、完璧な予選アタックを決めたことで予選3位という結果を手にした。そして決勝では好スタートでトップに立ったことでマルドナドと優勝争いを演じることとなった。アロンソは「正直言って、誰にも(上位進出の)理由を正確に理解することは不可能だし、僕らにも無理だ。まだ未知の要素だらけだよ」と吐露した。

 こうした状況を生んでいるもうひとつの要因が、タイヤだ。

 ミハエル・シューマッハが「タイヤがレースをダメにしている。生卵のようで走っていて面白くない」と批判したことで、バルセロナのパドックはタイヤに関する話題で持ちきりとなった。

 タイヤのグリップ特性が特殊で運転しづらく、それゆえタイヤ性能の"予測不可能さ"が、レースを本来の競争とは違う、クジ引きのようなものにしているというのだ。

 確かに、気温と路面コンディションによってタイヤの性能が変化することもあり、予選の途中から突然不可解なグリップ低下が発生したというコメントが聞かれることもある。同じように決勝でも、突然タイヤのライフ(寿命)が終わって劣化し、グリップしなくなってズルズルと後退するマシンも見られる。

 マシン性能では最速と言われるマクラーレンでさえ、スペインGPではルイス・ハミルトンが予選トップタイムを記録する一方で、ジェンソン・バトンが原因不明のアンダーステアに苦しんでQ2で敗退することになった。ハッキリとした原因は掴めていないというが、2台のセットアップはほぼ同じであり、原因は「おそらくタイヤだろう」というのがチームの見方だ。

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