【MotoGP】天才バレンティーノ・ロッシはもう勝てないのか? (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信、Getty Images●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu,Getty Images

今シーズン、2戦とも上位進出できていないなか、ロッシは優勝できるのか今シーズン、2戦とも上位進出できていないなか、ロッシは優勝できるのか
 ちなみに、この日に走行したマシンは1台が3月事前テスト時のセッティングで、もう1台はヘイデンのセッティングに近いものを試したが、ヘイデンのセッティングは自分の好みではない、とも明言している。

 土曜の予選は「運悪くドライコンディション」になってしまい、ロッシは13番手に終わった。一方のヘイデンは上記のとおりフロントローを獲得した。

「今まで(ホンダやヤマハなど)いろんなバイクに乗ってきて、そのたびに乗り方を変えてきたけれども、最終的にはそれほど大きく変える必要はなかった。でも、ドゥカティの場合は問題が大きく出てしまう。ニッキーは僕と乗り方がだいぶ異なるし、自分が彼みたいに乗るのはとても難しい」

「今日の予選では、チームが特に何か大きなミスをしたわけじゃないんだ。チームが抱えている問題は僕が抱えている問題とまさに同じ。彼らもいろんなバイクを経験してきて、セッティングを変えてバイクを速く走らせるための引き出しはたくさん持っているんだけど、それがドゥカティではうまくいかないんだ」

 これらの言葉から浮き彫りになるのは、"どんなバイクでもあっさり乗りこなしてしまう"ゆえに天才の名をほしいままにしてきたバレンティーノ・ロッシと、そのロッシと13年間行動を共にして彼の好みや癖を知り尽くし、どんな状況にも万全の対応を図ってきたジェレミー・バージェス率いるメカニック集団の知識と技術が、デスモセディチというドゥカティのマシンにはまるで通用していない、という事実だ。

 それほどまでにデスモセディチが突飛で特異な特性を備えているのか、あるいは、ロッシ自身が自らの裡(うち)に備えていた"魔法"がもはや消え失せてしまったのか。そしてそもそも、「ドゥカティには魔法が通用しない」ことに気づくまで、どうしてこんなに長い時間がかかってしまったのか。

 拒否し続けていた「自分の好みではないヘイデンのセッティング」とは、要するにドゥカティ推奨のセットアップ、ということでもあるのだろう。だが、そのヘイデンにしたところで、決勝レースではタイヤに苛酷なマシンの特性の影響で、中盤以降はずるずる順位を下げている。「この問題を早急に何とかしないと、路面温度が上昇する夏に向けてさらに厳しい走りを強いられる」とヘイデンはレース後に話している。

 次戦ポルトガルGPの翌日に行なわれる事後テストでは、ドゥカティは新しいフレームを投入し、パワー特性の穏やかなエンジンも試す可能性があるという。開幕前のテストでロッシが言及し待ち焦がれていたマテリアルだ。

 このテストが終わるとすぐに第4戦を迎える。このテスト結果次第で、今年のドゥカティの命運は事実上定まるといっていいだろう。

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