【F1】不本意な10位。可夢偉とザウバーに何が足りなかったのか? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 同じ戦略どうしの真っ向勝負に慣れている上位チームならば、今ピットストップすればコースに戻る時にはどのマシンの前になる、あるいは後ろになるというコース上の位置関係をしっかりと計算し、把握・分析したうえでピットインのタイミングを決める。しかし今のザウバーにはそこまでのチーム力はない。

「それも本当はできないといけないんですけどね......」

 可夢偉は言外に、レース運営面に不安が残るチームへのもどかしさを匂わせた。

 しかし、レース終盤になってポール・ディ・レスタ(フォース・インディア)に前を抑えられていた可夢偉は、「コース上の順位がそのまま結果につながる。抜く必要があるぞ!」というレースエンジニアからの無線に応えてこれをパス。そして、チームメイトのセルジオ・ペレスの背後につけていたからこそ、ペースが極端に落ちたキミ・ライコネンを追い抜く際の攻防に紛れて、ペレスとライコネンの2台を同時にパスして10位入賞をもぎ取ることができた。

「土曜日でレースが終わっていたら気持ちよかったんですけどね。まぁ次のバーレーンが1週間後なんで、前回のマレーシアみたいに2、3週間もあるよりマシかなと思ってます(苦笑)。(今回は)スタートポジションが良かったんで、もっと良い結果にしたかったんですけど、それはまぁ次回に果たしたいなと思います」

 可夢偉は決して口には出さなかったが、この中国GPの結果によって、前戦マレーシアGPで表彰台獲得の先を越されたチームメイトに対するけん制にも成功した。

 チームの戦略ミスやマシンの整備ミスに対するさまざまな思いもあったが、可夢偉は文句も言わず、静かに耐えてきた。そして中国では結果にこそつながらなかったものの、しっかりとした手応えを手にすることができた。

「今回はこれまで課題にしてきた予選の結果が良くて自信も持てたんで、次回はそれをキープしつつ、さらに決勝のレースペースを良くして、バーレーンで取り返せるようにチームと一緒に頑張りたいなと思います」

 シーズン序盤戦の最後となるバーレーンGPは、今後の展開を占ううえでもザウバーと可夢偉にとって勝負のレースになる。

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