【F1】開幕戦6位入賞で小林可夢偉が得た手応え。
「もっといい戦いができる」
予選は13位も、決勝レースで好走した可夢偉。次戦、マレーシアGPは今週末
最終ラップに6位を快走していたパストール・マルドナドが激しくウォールにクラッシュしたことが、最後の波乱を呼んだ。飛び散った破片を避けるべくスローダウンしたペレスに、後方のニコ・ロズベルグが並びかける。すると両者が接触し、ロズベルグはタイヤがパンク。ペレスもスピードを失って、その横を可夢偉がKERSの加速で一気にすり抜けた。
「セルジオ(・ペレス)が破片を踏まないようにと結構減速したんです。そうしたら後ろのみんなが詰まってしまって。で次のコーナー(ターン9)で彼がミスをしてロズベルグに抜かれて、フロントウイングで当たってロズベルグをパンクさせて。2台ともシケイン(ターン11〜12)をショートカットしたんですけど、僕はそのまま普通に走って、裏ストレートでKERSを使って抜いて終わり、って感じです。僕は何もしてないんですけど(笑)」
結果的に、可夢偉は最終ラップに順位を3つ上げて6位でチェッカーを受けた。
実はこのポジションは、土曜日の予選でチームが予想していたものとそう変わらない結果だった。タイヤのウォームアップに失敗した可夢偉は13位に終わっていたが、純粋なマシンパフォーマンス的には「7位か8位には行けたはず」というレベルだったのだ。紆余曲折はあったものの、決勝ではそのポテンシャルが反映された結果に落ち着いたことになる。
「簡単に言うと、周りが落ちたっていうことですね。オフスロットルブローの排気管がなかったから、相当酷かったっていうことです。僕らも若干落ちてるんですけど、周りはもっと落ちたということでしょう」
開幕前からの上々の下馬評に、可夢偉は「言いたいヤツは勝手に言っとけって感じですね。あまり期待しすぎないようにしないと」とあえて目を背けていたのは、むしろ彼ら自身がテスト結果から高い期待値を弾き出していたからに他ならない。
「いや、ホント、そんなのどうでもいいんですよ。そんなこと考えてるヒマがあったら、自分らのクルマを速くすることを考えた方が得でしょ? 僕らの仕事はクルマを速くすることなんやから」
可夢偉自身はそう言うが、その期待値が間違っていなかったことは証明された。
「今後も予選から前に行ければ、もっといい戦いができるんじゃないかと思います。シーズン後半はおカネのあるチームが力を付けてくるやろけど、序盤戦はね」
そうは言いながらも、可夢偉の表情に笑顔はない。タナボタとも言える6位入賞に、可夢偉は決して喜んではいなかった。今のザウバーと可夢偉の本来のポテンシャルは、こんなものではないという気持ちの表われだろうか。だからこそ、1週間後のマレーシアGPにはさらなる期待が高まる。可夢偉の活躍が、2012年シーズン序盤戦を面白くしてくれそうだ。
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