【F1】大接戦の予感。小林可夢偉が語る新シーズン展望。 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Getty Images

 テスト3日目には、チームメイトのセルジオ・ペレスが予選アタックを行なってトップタイムを記録している。テストのタイム比較には意味がないとは言え、まずまずのピーク性能は確認できている。

 だが問題は、予選のピーク性能をとるか、決勝の安定性をとるか。今ザウバーが抱えている問題は、そこだ。

「前回のテストでは、1発の速さを優先したセッティングで、速いけどタイヤがもたないっていう状態で。今回は(決勝を想定した)燃料が重い時にどれだけタイヤをもたせられるかっていうことを考えて走って。その両方の真ん中をとるか、予選か決勝のどちらかをとるか。それはコースによって変わってくるんですけど、レースでタイヤをもたせるセッティングがまだ見つけ切れなかった」

 今年はタイヤが柔らかくなった。そのせいでタイヤの性能低下が早く、いかにこれを持続させるかがレースの重要なカギになりそうだ。一発の速さがある上位チームでも、この扱いには苦労しており、ここでミスを犯せばあっという間に転落する可能性も秘めているのだ。

「今年はタイヤの保ち方が去年以上にレースを左右することになるでしょうね。そういう意味では、レースのセッティングがすごく重要なんじゃないかなと見てるんですけどね。それに対応できてなおかつ予選できちんと戦えるセッティングっていうのがあまりにも違いすぎていて、まだうまく見つけられてないんです」

 だがそれは今回収集した膨大なデータを分析してシミュレーションを行なうことで、ある程度の解答は見つけられそうだという。その成否がまずは開幕戦のザウバーと小林可夢偉の活躍を左右することになりそうだ。

「(クルマには)ポテンシャルはあるんですけど、それをうまく扱うのはまだ難しいかなという感じですね。うまくまとめられれば充分にポテンシャルは出せると思うんで、この2週間でしっかりと準備したいですね。テストを振り返って見ても、全体的には悪くないですよ」

 そう語る可夢偉の表情には余裕が感じられる。

 可夢偉はこの3年目のシーズンが「勝負の年」だと公言している。ここで結果を残さなければ、上位に行くことはできない。それどころか、このF1に残ることができない。それは可夢偉自身が一番よく分かっている。

「正直、今年が一番難しいです。でも、上に行くのも(シートが空きそうな)今年がチャンスでもありますから。本当に今年は勝負の年だと思っているし、僕自身としてはこれまで以上に自信を持って臨んでいます」

 そんなドライバーとしての自信が、2012年の可夢偉にさらなる飛躍をもたらしてくれることを期待したい。

 これまで以上にエキサイティングで面白いシーズンになりそうな予感がただよっている今年のF1の中で、可夢偉の鋭い走りが強烈なスパイスを与えてくれることを。

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