【MotoGP】順調なホンダ&ヤマハと対照的。ロッシの表情を曇らせるドゥカティの迷走 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • photo by Getty Images

 それぞれ充実したテストとなった様子のホンダやヤマハと対照的なのが、ドゥカティだ。

 4週間前のセパンテストでは、バレンティーノ・ロッシが大きな進歩をコメントし、昨年の苦戦からようやく脱却しつつあるようにも見えたが、ここに来てまたしても迷走気味の予兆を漂わせている。

 たとえば、今回のテストで試した新たなトラクションコントロールシステムの手応えについて「悪くない」とコメントするものの、その口ぶりは前回のセパンテストで見せた手放しの喜びようからはほど遠い。

 ニューパーツの投入も「計画立てて行なわれている」と話すが、「次のヘレスと開幕戦まで(パーツ投入の)スケジュールは決まっている。フィリポ(・プレツィオージ/ドゥカティ・コルセ・ゼネラルマネージャー)とも話したけど、5月頃になればさらに(大きな変化を見込める)新たなものを投入できるだろう」と語る様子からは、舞台裏で開発陣に発破をかけ叱咤している様子も推測できる。

 最終日のタイムはストーナーから1秒差で、前回テストよりもギャップを詰めたとはいえ、順位で見るとホンダとヤマハ全員の後塵を拝する10番手。

「前回のテストではホンダとヤマハのファクトリー4名に続く5番手だったけれど、今回は両社のサテライトチーム勢にも後れてしまっている。それがとても気がかりだ」とロッシ。表情を曇らせているのは、タイムの開きや順位に加え、マシンの改善が思ったように進まないフラストレーションも大きな原因だろう。

「コーナー侵入も遅いし、旋回速度も安定しない。ものすごいアンダーステアで(メリハリのきいた旋回が難しく)、立ち上がりの加速でもタイムをロスしてしまう。前回テストの際には、旋回から立ち上がりが課題だったけど、今回はそれをなにひとつ改善できなかった」

 このセリフは、去年、何度も繰り返したコメントとまったく同じ内容だ。そう指摘されると、「いや、良くなってるよ。去年ほど転倒しなかったから」と笑ってみせた後、「バイクの特性は、まだ去年のものに似ているんだ」と真顔に戻る。

 3週間後には、スペイン・ヘレスで開幕直前の最終テストが控えている。劇的な改善を望まないにしても、現状の深刻な課題をどれだけ潰しこむことができるのか。前回テストの手応えがぬか喜びだったとは彼らも考えたくないだろうが、どうやら今季も、ドゥカティには難しい試練が待ち受けていそうだ。

 とはいえ、厳しい道のりであろうが洋々たる前途であろうが、4月8日のカタールGPから開幕する新シーズンに向けて、バレンティーノ・ロッシの行方に大きな注目が集まることは、今も昔も変わらない。

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