「絶対リベンジするから覚えとけよ」。勢い止まらぬルーキー・今村聖奈の騎手人生は挫折から始まった (2ページ目)

  • 河合 力●取材・文 text by Kawai Chikara

GⅢCBC賞で初重賞制覇を果たした photo by Kyodo NewsGⅢCBC賞で初重賞制覇を果たした photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る

初勝利と会心のレース

ーーだとすると、初勝利の瞬間は格別だったのでは? 3月13日の阪神8レース、5番人気のブラビオ(牡4歳)での白星でした。12頭立てのなか、道中は外目の5番手を追走。外からきっちり差し切りましたね。

 ブラビオの初勝利はうれしかったですね。この馬は本当に難しいタイプで、性格はすごくいい子だけど、レースを重ねるうちに余裕がなくなり、頑張りすぎるように。その結果、テンションが上がって人とのコミュニケーションが取りづらくなったり、競馬に対してマイナスイメージを抱いて途中でレースをやめるようになっていました。

ーーたしかに前走は逃げながら途中で失速して11着、前々走も12着と大敗していました。そんなブラビオに対してどう接したんですか?

 まだまだ私の引き出しも少なかったのですが、とにかくレースでテンションを上げたくなかったので、なるべく1頭になって馬が考える時間を作りましたね。レースまでの移動中は他の馬から離れて1頭で歩いたり。

ーーちなみに、これまでの騎乗で今村騎手の「会心のレース」はありますか?

 いくつかありますが、ひとつはレディズビーク(牝3歳)で勝った時ですね(6月5日、中京6レース)。コンビを組んで3戦目での勝利でしたが、この子も調教で初めて乗った時からすごく頑張り屋の性格で、レースでも最初から先頭を走りたそうな雰囲気がありました。

 ただ、そこで安易に逃げるレースをしてしまうと、今後、一辺倒な競馬しかできなくなる。それなら道中は我慢させて、直線できっちり脚を使おうと。

 そう考えていたらレディズビークも理解してくれて。折り合いも心配することなく運べましたし、1頭の馬としっかり向き合えたレースだと思います。

ーーさらに、7月3日にはGⅢのCBC賞をテイエムスパーダ(牝3歳)で勝って初重賞制覇。このレースは、前半3ハロン(600m)を31秒8という超ハイペースで飛ばし、そのまま3馬身半差の快勝。勝ちタイムの1分5秒8は日本レコードでした。それ以外にも、今村騎手のレースを見ていると、3コーナーから一気に仕掛けるなど、本当に思いきった競馬が多いですよね。どうして迷いなく騎乗できるのでしょうか?

 小さい頃からメンタルを鍛えていただいたおかげだと思います。厳しい先生に教えていただくことも多かったですし。あとは「これで負けたら仕方ない」というレースを常にしようと考えていて。師匠の寺島良調教師からも、騎乗依頼をいただく先生からもそれをあと押ししていただけているので、思いきり乗れるのかなと。

 ただレース前からこうしようと決めつけているわけではなく、あくまでゲートを出てから、展開を見るなかで判断していますね。

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